八紘一宇

三原じゅん子参院議員が参議院予算員会での質問の中で「八紘一宇は大切な価値観」と発言した。この話題は俺の見るところ、それなりに盛り上がってはいるけれど、爆発的には盛り上がってはいないように思われる。テレビではあまり取り上げられていないようにみえるし。それもさりありなんで、三原議員が何でこんなことを唐突に言い出したのか実に不可解なのである。まあ左巻きの人はそれでも「戦前を美化している」みたいな方向で批判するんだろうけれど、三原議員が「使ってはいけない言葉をあえて使う」みたいな緊張感もなく、ごく自然にこの言葉を使っているので「?」という雰囲気になってしまうのである。


三原議員と俺は同世代なんだけれど、俺個人の経験としては「八紘一宇」という言葉は死語であって、生きた言葉として聞いたことは一度もない。そもそもあまり聞かない言葉であって、学生だった頃には「大東亜共栄圏」とかはそれでも少しは目にすすることもあったけれど「八紘一宇」はかなり詳細な日本史の本で目にする程度。ちなみに意味を知ったのはネットを始めてからだったりする(これは俺が無知すぎるかもしれないが)。そんな言葉が三原議員の口から出てくるというのが、その是非以前に不自然に感じるのである。麻生氏が「こういった考え方をお持ちの方が三原先生みたいな世代におられるのにちょっと正直驚いたのが実感です」と答弁しているけれど、俺も驚いた。


さらに、その語り方にも違和感を持つのである。「八紘一宇」という言葉を肯定的に使用したら批判があることくらいは普通は理解しているものだろう。だから自分はその言葉を使うのを悪いことではないと思っていても使用するときには、たとえば「この言葉を使うべきでないという人もおられるかもしれませんが」とか、何らかのことを言うんじゃないかと思うんだけれど、そうではなくて。まるで「あなた方はご存知ないかもしれませんが戦前にこういう言葉がありました」みたいな感じで話しているのが不思議。


それと三原議員のこれを語るときの口調が正直気色悪い。なんちゃらセミナーの講義を聴いてるような感覚になる。もっとも三原議員の発言を普段聞いているわけではないので、いつもこういう話し方しているのかもしれないが。


それともう一つ、清水芳太郎というマイナー人物の書いた『建国』という本の中の文章を紹介しているわけだけれど、そんな情報をどこで入手したんだという疑問。おそらくは誰かが入れ知恵したんだろう。それを聞いて、そんな素晴らしい言葉があるんだと素直に感激して、深く考えずに使ってみたくなったということではあるまいか?


で、この言葉が戦争のスローガンに使われていたことはさすがに三原議員も知っていたようだ。なのになぜ使ったかといえば、おそらくは、そうはいっても「八紘一宇」という言葉自体はすばらしい言葉じゃないかと、そして言葉が悪いんじゃなくて悪用したのが悪いんだと、そう考えたのではないかと思われる。つまりこの前話題になった黒塗りメイクの件で「差別しようという意図はない。むしろ黒人をリスペクトしているんだ」という考えがあったのと同じような思考をしているんだろうと思われる。