なぜ「ファシスト」は最大の侮蔑語なのか?

第二次世界大戦で枢軸国が敗北すると、「ファシスト」を悪口や蔑称(ファシスト (侮蔑語)(英語版))として扱う風潮は世界的なものとなった[13]。そしてしばしば、政治運動に対して政治的スペクトルをまたがって幅広く呼ばれるようになった[14]。

ファシズム - Wikipedia
ファシストを自称する外山恒一氏など極一部の人を除けば、右であろうが左であろうが、自分がファシスト呼ばわりされることは最大級の侮辱と捉えるであろう。


そんなの当然のように思えるかもしれないけれど、そう単純な話でもないようにも思える。


理由 その1 ホロコースト
ファシストの行った悪行で最大のものはホロコーストだと考えられている。「ファシスト=ホロコーストを肯定する者」というイメージから最大級の侮蔑語となる。もっともホロコーストを行ったのはナチス・ドイツであって、ファシストなら必ずホロコーストを肯定するとは限らないかもしれない。またホロコーストが無かったと主張する歴史修正主義者はホロコースト=悪と捉えているが故に否定するという側面もあると思われるが彼らもファシストとレッテル貼りされるということを考えれば、ホロコーストを否定するファシストの存在も考えられる。しかし「ホロコーストを否定するファシスト」なら最大級の侮蔑語ではないかといえばそうではない。特に歴史修正主義の場合は事実を直視していないという意味で「ホロコーストを軽視している→ホロコーストを容認している」とみなされうる。


理由 その2 全体主義
一般的にはファシストのイメージは全体主義者である。ホロコーストを肯定していなくても全体主義者とみなされればファシストのレッテルを貼られる。ただし「ファシスト全体主義者である」というのは正しくても「全体主義者はファシストである」というのは正確ではない。なぜなら共産主義全体主義だからだ。ファシスト全体主義者であるがゆえに最大の侮蔑語であるならば共産主義者と呼ぶことも最大の侮蔑語であろう。「共産主義者コミュニスト)」という呼称にそういう用法があるにはあると思われるが日本では一般的ではない。ゆえに「ファシスト」が最大の侮蔑語である理由は全体主義者だからというだけではなくホロコーストを実行したことが大きいということになろう。


理由 その3 反共
全体主義者のファシストにあって共産主義者に無いものとしてもう一つあるのが、ファシストは反共だが共産主義者は反共ではないという点がある(当たり前)。ただし客観的に見れば共産主義者も内部闘争によって勝者が敗者の共産主義者を弾圧している。しかし当事者からすれば敗者は「偽りの共産主義者」ということになるので共産主義者を弾圧していないことになる。それはともかく、ファシストは反共であるがゆえに共産主義者の敵である。そしてここでも「ファシストは敵である」が「敵はファシストである」ということになり、共産主義の敵はファシストのレッテルを貼られ侮蔑される。


この場合はファシストのレッテル貼りは共産主義者にとっては意味があっても、共産主義者以外にとっては意味のないことではある。しかし共産主義は東側だけではなく西側の知識人にも広く支持者がいた。彼らは影響力があるので共産主義ではない一般人にも影響を及ぼして共産主義的な文脈でのファシストの用法もそれと知らずに浸透した。一般には「ファシスト=全体主義」のイメージがあるので「ファシスト」を批判している人物は全体主義を否定しているのだろうと思い込んでいるかもしれないが、実は批判している当人もまた共産主義という全体主義に近しい人物だという滑稽な場面をよく見かけるのもそういう背景が一つにはあるのだろう。