⇒「浦島太郎」にカットされた真の結末 永遠の命もつ鶴に生まれ変わる - ライブドアニュース
浦島太郎が鶴になる話は誰でも知ってるというわけではないかもしれないけれど、それなりに有名だと思われ。鶴になる話は室町時代に成立した『お伽草紙』版の浦島太郎にある。浦島物語は『日本書紀』『丹後国風土記』『万葉集』にもあるけれど、そこでは鶴になってない模様。
⇒浦島太郎 - Wikipedia
もともと、「浦島太郎」が書かれたのは室町時代の御伽草子。その400年後の明治29年に、児童文学者の巌谷小波氏が子供向けに書き直したものが、現在よく知られる「浦島太郎」の物語なのだそうだ。その際、巌谷氏は「約束を破ると良くない」という教訓を伝えるため、鶴になる部分をカットしたらしい。
とある。「らしい」とあるので巌谷小波本人がそう言ったというわけではなくて、誰かがそう推測したのだろう。それが誰なのかはわからない。どこかの研究者がそう推測したのかもしれないが、番組のライターが推測したのかもしれない。
そもそも『御伽草紙』の「浦島太郎」と巌谷小波の「浦島太郎」は鶴になる部分だけが違うのではない。
- 巌谷版では、太郎は子供にいじめられていた亀を助けたことになっているが、『御伽草子』では太郎が釣り上げた亀を海に帰したことになっている。
- 巌谷版では、亀の背中に乗って龍宮城に行くが、『御伽草子』では舟に乗って行く(ちなみにどちらも龍宮城が海面下にあるとは書いてない。巌谷版の挿絵では明らかに海上にある。)
- 巌谷版では、亀の主人の乙姫が登場するが、『御伽草子』に乙姫は登場しない。
- 巌谷版では、乙姫は亀を助けたお礼に太郎をもてなすだけだが、『御伽草子』では助けた亀が女房姿となって太郎と夫婦になる。
- 巌谷版では、乙姫が玉手箱を渡すが、『御伽草子』が亀が渡す(筥とあるだけで玉手箱とは書いてない)。
- 巌谷版では、玉手箱は「お土産」。『御伽草子』では「筥」は亀の女房の「かたみ」。
と巌谷版は『御伽草子』とかなり違う話となっている。
どうしてこうなったのかはわからない。検索すると「変身譚覚え書き-5-巌谷小波と昔話「浦島太郎」の成立(高橋宣勝 )」という論文があったりするので、研究はなされているのだろうと思われるが内容はネットでは見ることができない。
巌谷版が『御伽草子』をベースにしたものなのは確かだろうが、それと異なるところは巌谷小波の創作・改変なのかといえば、必ずしもそうとは言えないように思われ。たとえば、『御伽草子』では「昔丹後の國に浦島といふもの侍りしに」とあるのが、巌谷版では「丹後の國水の江という處に」となっているのは、「水の江」が巌谷の創作ではなくて、『丹後国風土記』に「水の江の 浦島の子が」とあるからだろう。だとすれば、巌谷版で太郎が鶴にならないのは、「約束を破ると良くない」という教訓のためなどではなく、単に『丹後国風土記』等では鶴になってないからなのかもしれない。
ただ、巌谷版には『丹後国風土記』等にも見えない、先に書いた子供にいじめられていた亀を助けたという話が載っているのは創作・改変なのかもしれない。しかしこれも絶対にそうだと言い切れる話ではなくて、江戸時代に既にそういう話が流通していたのかもしれない。
亀に乗る浦島が十八世紀の初めには存在した
⇒林晃平著『浦島伝説の研究』(三浦佑之)
という研究もある。
長くなったのでここでおしまい。つづくかもしれないけどつづかないかもしれない。