おバカにもほどがある。

藤原直哉のインターネット放送局

でまあ、わたしの聞いている話によりますと郵貯のお金の内、200兆円はもうすでにアメリカの国債、30 (40*)年満期の国債の購入に充当されたと。で、これがようするに郵政民営化の目的だったんだと。もうすでにゴールドマンサックスの手で充当はされていると。その手数料として3兆円の金がアメリカからアメリカ国債の形で渡されたと。それを小泉1兆、竹中2兆で分けたと。

俺はだいぶ遅れて知ったのだが、こんな噂がネット上でちょっとした話題になっていたようだ。実にばかばかしいヨタ話である。通常、この手の話は「なかったこと」を証明するのが難しい。ところがこれは「なかったこと」が即座にわかる、陰謀論マニアの俺から見てもかなり珍しい部類の陰謀論だ。


ちょっと考えればわかることだが、郵貯は預かった金を金庫にしまっているわけではなく、当然のことながら運用している。何で運用しているかというと、主に国債を購入している。
郵貯資金の運用状況


その郵貯の資金を米国債の運用に回すとしたら、現在運用している債券を現金化しなければならない。現金化するためには誰かが債権を引き受けて、替わりに現金を引き渡さなければならない。200兆円もの現金が郵貯に吸い上げられたとしたら、日本経済は今頃大混乱に陥っていなければならない。


実に馬鹿馬鹿しい話だ。さすがにこんな話を信じる人はいないだろうと思うのだが、信用したり、もしくは「あったかもしれない」などとのたまう人がいたりするのは驚きだ。ただし、さすがにあまりにも馬鹿げているので、いつもは陰謀論があればすぐに乗っかる、陰謀論ウォッチャーにはおなじみの「常連」の中にも懐疑的な人はいる(かわりに、陰謀論を意図的に流すことで、政府に批判的な人を陥れようとする陰謀だという、別の陰謀論が発生している)。


さて、この噂を流した張本人である、藤原直哉という人について俺は今回初めて耳にした(前に目にしたかもしれないが印象に残っていない)のだが、
「藤原直哉 略歴」
を信用するなら、「東京大学経済学部卒業」であり、「ソロモン・ブラザーズ・アジア証券」に在籍していたこともあるということなので、こんな金融のイロハのイに属する基礎知識を知らないとは、俄かには信じられないことだ。だから意図的にヨタ話を流した可能性を考えないでもないけど、ざっと(人脈等を)見たところでは、むしろ前々から「素質」があったと考えたほうがよさそうだ。


ところで、「火のないところに煙は立たない」というが、この噂も全く突然出てきたわけではなさそうだ。といっても、もちろん、一部の人が言っているように、これと似たようなことがあったということではなくて、この噂の「原型」があるということだ。


それは、
2005年森田実政治日誌[230] 郵政民営化はウォール街のためか――米国から9.11総選挙の意味についてのメッセージ

米国通の友人H氏から、『ウォールストリート・ジャーナル』2005年8月8日号のインターネット版記事の一部が送られてきた。
 『ウォールストリート・ジャーナル』は「郵政民営化法案は廃案となったが、これは手取りの時期が少し延びたに過ぎない。ほんの少し待てば、われわれは3兆ドルを手に入れることができる」との見方を述べている。
 3兆ドルとは、国民が郵政公社に預けている350兆円のことである。ウォール街は、9月11日の総選挙で小泉首相が勝利し、総選挙後の特別国会で郵政法案を再提出し、成立させると信じているようである。
 H氏によると、これを確実にするため、ウォール街は、多額の広告費を日本に投入し、日本のテレビを動員して、日本国民をマインドコントロールして、小泉首相を大勝利させる方向に動いている。
 「多額の広告費はどのくらいか?」と聞くと、「とにかくケタ違いの金額のようだ。いままで投入した広告費の10倍を投入してもかまわない、と考えている。350兆円を得るために、その1〜2%を使ってもよいと考えているようです。

(以下略)


ウォール街が、「350兆円を得るために、その1〜2%を使ってもよいと考えている」という。これは去年、ネットで話題になった話だから、知っている人も多いはず。俺が森田実に興味を持ったのもこれがきっかけ。


一方、藤原直哉曰く、

まず3兆円(米国にくれてやった340兆円の1%に相当します)の情報ソースですが、自民党政権の裏方をやっている実力者2人からほとんど同じよう話を聞きましたので、事実だと考えています。

藤原直哉のインターネット放送局


というわけで見事に符号する。それにしても「自民党政権の裏方」とは誰であろうか。そもそも「裏方」って何だろうか。例えば自民党に招かれて講演したという程度でも「裏方」と呼ぶことができるかもしれない。随分と幅が広そうな用語だ。