納豆ブーム

内田樹先生によると、『あるある大事典』で、納豆にダイエット効果があると紹介されたんで、品不足になって、店頭から納豆が消えたという話に関して、「日本人の集団主義」を批判する傾向があるそうで、内田先生は、それに対して、「日本人の集団主義はどうにもならない」ので、それをどう「善用」するかを考えたほうがいいとおっしゃっている。


日本人が「集団主義」かどうかという大きな問題は置いといて、今回の「納豆ブーム」に限って考えると、本当に「集団主義」なんだろうかと疑問に思わなくもない。


(いつものことながら、俺は素人なので、あくまで想像であることをあらかじめお断りしておく)


まず、考えてみたいのは、納豆には賞味期限があるということだ。俺は納豆の賞味期限などほとんど気にしない。というのは嘘で、それは食べる時に気にしないということで、買う時には賞味期限が長いもの、すなわち生産日が直近のものを買う。こういう人は多いのではなかろうか?逆に店の立場から考えれば、新しいものが先に売れ、古いものが残ってしまうことになる。残った古いものは、古くなればなるほどますます売れなくなり、最終的には処分せざるをえない。それは店の損失である。


だから、店側は新しいものは奥に置いて、古いものを手に取りやすいところに置いたり、古いものは値引きしたりする。店にとっての理想は、当日仕入れたものが、当日中に全部売れることだが、そう上手くいくものでもない。少なめに仕入れれば、売れ残りのリスクは減るが、その代わり売り上げのチャンスを逃すリスクが発生する。そういう問題を抱えながら、店側としては、ロスが最少で、かつ売り上げが最大になるように、過去のデータ等々から、日々の仕入れを検討する。


そういう状況で、突然、テレビで納豆にダイエット効果があると紹介されればどうなるか?店側は、そういう状況になることを知らないで、予想される売り上げに応じた仕入れをしているのに、それを上回る需要があれば、たちまち品不足になるのは、自然なことではなかろうか?それは何も異常なことではない。


例えば(あくまで例えで本当の数字は知らないが)店に一日1000人の来店があり、そのうち一割の100人が納豆を買うとする。一人当たり2パック買うとして、一日の売り上げは200パックだ。当然店は毎日200パックを仕入れる。納豆の場合、当日売れなくても廃棄するというわけではないので、前日の残りが50パックあるとして、全部で250パックだ。そのうち200パックは通常売れるので、また50パックが残る。それで日々の過不足を調整している。その50パックが売れたら在庫が空っぽになる。来店者が1000人いるので、そのうちの25人が、テレビを見て予定外の納豆を買えば、それだけで品不足だ。翌日は前日の残りはゼロなので、ギリギリの200パックしか在庫はない。「ブーム」が続いていれば、また品不足になる。仕入れを増やせば良いが、工場もまた、生産計画というものがあるから、欲しいからといって、そうそう簡単に要望に応えられるものではない。また工場をフル稼働して、生産を増やしても、品切れを怖れる店側が多めに注文するので、増産分はすぐに埋まってしまう。


というわけで、ちょっとしたことがきっかけで、品不足が生じる。特に納豆などは低価格なので、気軽に買えるからなおさらだ。それをもって、「日本人の集団主義」云々を論じることは適切なんだろうか?


などと思ってしまう…