「ランダムに配した点がなす直線」の疑問点(その2)

古代文明の謎はどこまで解けたか?』(太田出版)からの引用

いくつもの方法が試され、その中には一九八六年二月に放映されたBBCのドキュメンタリー番組、『いにしえの直線路の奇妙な問題』(The Strange Affair of the Old Straight Track)のために開発された方法もあった。コンピュータ・シミュレーションで、陸地測量部の地図上に同じ種類のモニュメントや、その分布を表示するというものだ。これは「本物」のレイラインについての対照標準として、非常に有益だということが明らかになった。それ以外のテクニックもあわせて用いることで、彼らはこう結論した ― 短いレイラインが偶然生じることはめったにない、という以前の仮説は「ひどく不正確だったかもしれない」

これは、
ランダムに配した点がなす直線 - Wikipedia
の説明とよく似ていると思う。


ただし、ここで示されていることは、レイラインが偶然生じる可能性は考えられていたよりも高いということであって、「レイライン探索家が発見したレイラインの数と平面上にランダムに点を配して引けた線の数とがよく一致する」ということではないと思われ(実際に番組見たわけじゃないので断言できないけど)。


[トンデモ][方位信仰]トホホなレイライン再び
去年
トホホなレイライン - 国家鮟鱇
と言う記事を書きましたが、地図を少し修正して説明を付け加えます。


静岡県久能山と愛知県の鳳来寺、同じく愛知県の大樹寺が直線で結ぶことができるというのは、知る人ぞ知る日本の「レイライン」です。家康は自分の死後、遺体を久能山に葬り、江戸の増上寺で葬礼をし、位牌を大樹寺に立て、一周忌を過ぎたら日光山に小さき堂をたてよと遺言しました。このことは、金地院崇伝の日記に記録されています。


その久能山大樹寺松平氏菩提寺)を結んだ直線上に鳳来寺があります。鳳来寺は家康の生母「於大の方」が参籠し家康を授けられたという伝説のある寺で、東照宮が造営されています。


久能山東照宮大樹寺を結んだ直線をグーグルマップで示しました。(青色のライン

より大きな地図で 久能山-日吉大社 を表示


このラインの距離は約237km。ラインと鳳来寺本堂とのズレは約73m、鳳来寺東照宮とのズレは約61mになります。この誤差が許容範囲か否か、人為的なものか偶然かが問題になるわけですが、少なくとも俺には魅力的な直線に見えます。



一方、宮元健次という大学教授が、この直線を延長すると滋賀県日吉大社に達すると主張しています。そこで久能山東照宮日吉大社を結んだ直線もグーグルマップで示しました(赤色のライン)。


「大きな地図で見る」をクリックすると地図の左下に「50km」と表示されると思いますが、その縮尺で見ると、青色のラインも赤色のラインもどちらも鳳来寺大樹寺の目印を通過しているように見えます。


しかし、拡大してみると、久能山日吉大社を結んだ直線は大樹寺の遙か北方を通過していることがわかります。大樹寺から約2.5kmも北上しなければ赤色のラインに到達しません。当然のことながら、この開きは西へ行けば行くほど開いていくのであり、グーグルマップ上で久能山大樹寺を結んだラインを延長してみると、このラインは日吉大社の地点では約7.7kmも南を通過していることになります。


約7.7kmもの開きを許容できるとしたら、何でもありであって、清水寺に至ると言うことだってできるし、北野天満宮に至ると言うことだってできるし、二条城に至るということだってできるし、とにかく京都のあらゆる施設を日吉大社と入れ替えて言うことが可能になるのであります。


従って俺は宮元教授の主張に何の魅力も感じません。しかしながら既に書いたように「50km」の縮尺では、これらの施設が直線上に並んでいるように見えてしまうのです。


ところで、
ランダムに配した点がなす直線 - Wikipedia
に貼付してある上の図は、図の中に137個のランダムな点を配置して、4つの点が直線に並ぶように見えるラインを示したものであり、それは一見そのように見えるけれど、拡大していけば到底直線上に並んでいるとはいえないものも含まれていると考えられます。


もちろんそれは当然の話なんですが、問題はこのように図の中に137もの点が配置されているような状況というのは、現実の世界に照らし合わせると相当広範囲の図であることが予想され、つまり相当な誤差を許容しているのであろうと思われるということです。