「ランダムに配した点がなす直線」の疑問点

以前書いた記事、
「太陽の道」という不幸(その2) - 国家鮟鱇
に対し、
ランダムに配した点がなす直線 - Wikipedia
の翻訳者であるNubewoさんからコメントをいただきました。


この際、これに関する疑問点を改めて書いてみたいと思います。


最大の疑問は、

計算機を用いたシミュレーションによって、レイライン探索家が発見したレイラインの数と平面上にランダムに点を配して引けた線の数とがよく一致することが確かめられた。これはレイラインがまったく偶然の産物である可能性を示唆している。

の部分のレイライン探索家が発見したレイラインの数」というのが何を指すのか全くわからない点であります。何らかの研究機関が公式な数を発表しているのでしょうか?


「英語版Wikipedia」の説明不足であるのか、それとも元から具体的に何を指すのか示されていないものなのかわかりませんが、少なくとも上記の説明だけでは全く納得できません。


そして、こういう説明の仕方はトンデモさんの常套手段でさえあります。例えば地震などの大災害が発生したときに、これはあらかじめ予言書に書かれていたと言う。地震が起きた西暦と預言書に書かれている数字が「一致している」、地震が起きた日時(暦・何々から何日目等いくらでも数字を任意に決められる)と預言書に書かれている数字が「一致している」、地震の被害者(死者・死傷者・被災者その他定義を変えれば数字はいくらでも変わる)の数と預言書に書かれている数字が一致している等々…後付けであれば、何かしら「一致している」数字が見つかったとしても不思議なことでもなんでもありません。


方位信仰に限定しても、「夏至の日の太陽の昇る方角と一致している」とか何とか、具体的な数値を示さず主張しているものが多々ありますが信用できません。あるいは「聖地を結ぶと正確な直角二等辺三角形」ができるなんてのもよく言われるところですが、具体的にどれだけ「正確」なのか示されていなければ信用できませんし、実際に確認してみると到底「正確」などとはいえないものが多々あります。


したがって、レイライン探索家が発見したレイラインの数と平面上にランダムに点を配して引けた線の数とがよく一致する」などと言われても迂闊に信用できるはずがありません。レイラインという「疑似科学」を否定する主張が、まさか疑似科学であるはずがないなどという楽観論は禁物です。具体的に何を指し示しているのかがわかって初めて評価できるというものです。


ちなみに『古代文明の謎はどこまで解けたか?』(太田出版)によると、英語の定期刊行物『レイハンター』が読者に情報を募ったところ「何百というレイライン」が集まったが、チェックしてみると、

「こうした直線のほとんどは非常に不正確だったり、農場などのきわめて疑問のある場所が組み込まれていたりすることが分かった」

そして1979年に刊行された「レイハンターの友」に収録されたのは「四一本のレイライン」でした。


レイライン探索家が発見したレイラインの数」「何百」「四一本」かでは全く違いますね。さらに、その中で「統計学的に意味がある」とされたのは「六本のレイラインであり、さらにさらに「厳密な統計学的アプローチ」によると「二つ」しか残らなかったのでした。一体これらのどれを採用して「よく一致する」と言っているのでしょう?



また、違和感を覚えるのは、ウィキペディアは自説を発表する場ではないのであり、こういうことを主張している人がいるのならば、それが誰で、いつどこでそれを主張したのかの記述があって然るべきであると思われるのに、それについての記述がないということです。