このブログで何度も(批判対象として)取り上げたことのある安齋育郎氏の『人はなぜ騙されるのか』(朝日新聞社)より、
今日までに知られたところによると、この地上絵は図柄などに宗教的な意味が込められているにしても、「鑑賞すること自体」が目的なのではなく、「巨大土木事業としての社会経済学的な意味」こそが本質だったのではないかという見方が提起されているのだ。
現代の日本でもそうだが、古代ペルーでも、地域により、年により、食糧生産に豊凶の差があった。一般に食糧が過剰にとれると人口が増える傾向がある。しかし、食糧の余剰生産が人口増加に直結したのでは、不作の時にたちまち飢餓に直面することになる。だから、食糧生産の余剰が人口増加に直結するのを防ぐ仕組みがあった方が社会運営はより安定する。そして、この巨大地上絵こそ、実はそうした機能を担っていたのではないかというのだ。
「ピラミッド公共事業説」なるものが、最初に唱えたクルト・メンデルスゾーン(彼は「公共事業」という言葉を使っていないのではないかと思うけれど)の意図するところとは異なった形で流布していることを思うと、ナスカ地上絵に関しても同様の疑問が湧く。
そもそもこういう説が本当に存在するのだろうか(誰が?どこで?)。
これもしばしば取り上げる『古代文明の謎はどこまで解けたかⅡ』(太田出版)では地上絵も扱っているけれど、そんな説は微塵も書かれていない。
(追記)
これか、
また、ナスカの社会には、ワリやクスコのような中央集権的な食料管理制度と食料貯蔵施設がなく、局所的、家族的なレベルで豊作時の食料を保管していたので、豊作時に人口が増え、不作時に死亡者がでやすい状況にあった。そのため、豊作だった場合の個人貯蔵分について、大規模な労働力を投入する必要のある儀式活動に注意を向けさせ、祭祀「施設」の「建設」=地上絵を「描く」活動に従事する労務集団に食糧を供給するために強制的に取り立てるシステムができていて不作時に備えていた、とイスベルは考えている。
⇒ナスカの地上絵 - Wikipedia
しかし、これも検索してみると、ソースはほぼ全てがウィキペディアによるものだと思われ。
これも原典に当たってみる必要がありそう…
ちなみに英字版Wikipediaにそんな説は紹介されていない。
⇒Nazca Lines - Wikipedia, the free encyclopedia
⇒William Isbell Nazca Lines - Google 検索
ナスカの巨大な地上絵 (One point science)
- 作者: W.H.イズベル,高山信雄,日経サイエンス編集部
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