ホメオパシーもどき?

俺が、今話題になっている「ホメオパシー」が、一般的な「ホメオパシー」と違うものではないのかという疑問を持っているからといって、一般的な「ホメオパシー」を擁護したいというわけではないということを、あらかじめ断っておく。


そもそもホメオパシーに限らず「○○とは何か」という定義の問題は、何に着目するかによって違ってしまうものであり、ある人は「これは○○だ」と言い、また別の人は「これは○○とは別物だ」と言って話が噛み合わないなんてことは良くあることだけれど、それでもAとBに違いがあるのならば、その違いに注意を払うことは決して意味のないことではないと思われ。


俺が懸念しているのは、今回話題になっている「ホメオパシー」が、西洋で流行している「ホメオパシー」と類似してはいるものの、(発信者側、もしくは受け手側、あるいは両者によって、また意識的か無意識かにかかわらず)日本風にアレンジされているのではなかろうかという疑問であり、それによって今まで日本に定着していなかったものが、今後日本で受け入れられやすくなってしまうのではないかという不安がある。そしてたとえ批判のためとはいえ、これをホメオパシーだと強調することは、却って逆効果になってしまうかもしれないのではないかという思いもある。

(ただし、最大の動機は、ニセ科学による被害を防ぎたいという正義感ではなくて、単純に疑問に思うところを知りたいという好奇心である)


だが、これはあくまで俺がそう感じるというだけで、実は誤解なのかもしれない。そこのところが自信がないし、これについて論じられているものがあまりにも少ない(全く無いというわけではないが)ので確認できないというのが現状だ。


最も気になるのが、助産婦がビタミンKの代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与えたということだ。これは複数の意味に解釈できる。


一つはビタミンK欠乏性を防ぐためにビタミンKを投与するという方法の代りに、レメディ投与という別の方法を取ったという意味。この場合「ビタミンK≠レメディ」になる。これが本来のホメオパシーの思想ではないだろうか。


もう一つは、ビタミンKと同じだが、より安全な薬としてレメディを投与したという意味。この場合は「ビタミンK≒レメディ」になる。だが、これはホメオパシーとは似て非なるものではなかろうか。


俺は最初このニュースを聞いたとき、(深く考えずに)後者の意味で受け取った。検索してみても、後者の意味で受け取っているであろう記事は多い。実際、新生児に「ビタミンKのレメディを与えた」と言われれば、ホメオパシーを知らない人は、それをビタミンKのシロップに類似したものだろうと考えるだろうと思う。


しかし、本来のホメオパシー的にはそうではないはずだ。そもそも先に書いたように、「ビタミンKのレメディ」という表現に、本来のホメオパシーとは異なる思想が混入しているように感じる。「ビタミンK欠乏性のレメディ」と呼ぶべきところではないのか?「ビタミンKのレメディ」では「ビタミンKを投与したときに生じる症状を治療する」という意味になってしまうのではないのか?


「ビタミンKのレメディ」にはサプリメントっぽい響きがあるのではなかろうか?そう理解して使用している人もいるのではないのか?「レメディ サプリ」で検索するとそれっぽいこと書いてるところもある。しかし、レメディとサプリは科学的に異なるだけでなく、ホメオパシー的にも異なるものではないのか?レメディは「薄めた毒」なのだから。西洋にも「ビタミンKのレメディ」なるものが存在するのだろうか?西洋でもレメディをサプリとして宣伝しているのか?そこのところが大いに疑問なのだが、今のところ俺には疑問が解消できていない。


で、より安全な薬としての「ホメオパシー」なのだとしたら、それは、人工的に合成した化学物質よりも自然界に存在するものの方が安心みたいな、日本にもたくさんいる「自然派」志向との親和性が高まるのではないかと思う。


だけど、本来のホメオパシーにそういう思想があるのかは疑問。本来のホメオパシーは、正統医学よりも効果がある、あるいは正統医学では治療できないものも治療できるということで受け入れられたのではないのだろうか?だとしたら、本来のホメオパシー的には、同じ効果がある(同じ効果しかない)のならば「ビタミンKシロップ」でも「ビタミンKのレメディ」でもどっちでも構わない(あえてレメディを使用する意味がない)という結論に至りそうな気がする(もちろん疑似科学であり事実はそうではないのだが)。


このあたり、ホメオパシーが広く受け入れられている欧米などで、どのような理由で受け入れられているのかについての信頼できる情報を見つけることが困難なので、よくわからない点が多い。