訓告

過去に同様の事例が無いかネット検索で調べてみた。ざっと見たところでは、言論の自由に関係すると思われるのは2件だけ。


一つは記憶に新しい首都大のケース。

また、ツイッターで「反感(上等!)」などと学生をあおったとして、同学部の別の男性准教授(46)を訓告にした。

首都大の男性准教授2人をそれぞれ諭旨解雇、訓告 ドブス動画問題 : J-CASTニュース


もう一つは「南京大虐殺」のケース。

たとえば静岡県立大学で国際関係学部の教授が、いわゆる南京 事件について、「南京大虐殺で殺害されたとされる人数には、ゼロから三十方人までさま ざまな意見がある」と発言したところ、中国人留学生が反発して履修の取り消しを求め、 大学側は留学生の要求を入れてこの教授を訓告処分にしたというんです(『産経新間』平 成十二年二月十九日付)。

言論、学間の自由を神しつぶす不当な”圧力”
※ ただし、

 大学側は処分について、留学生の要求を受け入れた結果ではなく、学内に設置した「教員の人事に関する特別委員会」の調査によって(1)留学生に対して差別的な扱いを行った(2)権限がないのに不正行為を認定し、処分として発表した(3)委員会の事情聴取などに応じなかった――などが訓告の理由に当たるとしているが、これに対し、この教授は「委員会の設置も知らされていなかった。文書の掲示は九年前から行っており、処分ではなく学生にも認知されている」と反論している。

月刊「正論」
ともある。


どっちも司法判断があったかは不明(多分なかったのだと思われる)。


大学じゃないけれど、司法判断のあったケースでは、「卒業式当日リボンを衣服に着用するなどの方法により国旗掲揚に反対する意思を表明したとの理由で文書による訓告」があった事例がある。
判例紹介-損害賠償請求事件

(1)文書訓告の性質等について
一般に,公務員に対する懲戒処分については,懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものと解される。
ところで,地方公務員法29条1項は,懲戒処分として,戒告,減給,停職及び免職を予定しているが,文書訓告はこれらのいずれにも該当しない。
また,地方公務員法その他の関連法令にも文書訓告についての明文規定は存在しない。したがって,文書訓告は,これを受けた者の法律上の地位に影響を与える懲戒処分ではなく,対象者の職務遂行上の問題点を指摘し,その改善を促すために服務監督権限に基づいてされる事実上の措置であると認められる。文書訓告のこのような性質にかんがみると,服務監督権者による文書訓告が違法と評価されるのは,懲戒処分の場合以上に,社会通念上妥当を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限られるものと解するのが相当である。

これは公務員に関することで国立大学教授は公務員じゃないらしいんだけれど、大体これに準じるものとみてよいのではなかろうか?ということは早川由紀夫教授の件も、「訓告」だけでは訴えても勝つのは難しいのではないかと思われ。


ただし、読売の記事によると。

同大の堀川光久総務部長は「研究成果とは言えず、言論統制ではない。大学にも多数の苦情が来ている」とし、改善されない場合は懲戒処分も検討するとしている。

群大教授暴言「福島の農家はオウム信者と同じ」 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
とあり、大学側が懲戒処分を匂わせていることが争点になる可能性はあるんじゃあるまいか?


で、次の疑問は「懲戒処分は可能か?」ってことなんだけれど、
菊池誠教授、早川由紀夫教授訓告事件を論じる - Togetter

さっき、懲戒はあり得ないと書いたけど、ちょっとわからなくなった。どの程度の人権侵害か、だよね。

菊池誠先生もよくわかってない御様子。俺もわからない。そういうことを詳しい人がもっと論じてほしいよね。


(差別発言する人は法の枠外に置いて差別しても良いって考えているならこんなことで悩む必要はないけどね。俺は到底そんな考えは持てないわけで)