ビッグバン理論とキリスト教

意外や意外…きっと驚くに違いない10のトリビア:らばQ

9. ビッグ・バン理論はカトリックの神父によって提唱された

えっと、神による天地創造はどうなったのでしょうか…。


ビッグバン - Wikipedia

《ビッグバン VS 定常宇宙》論争では、ローマカトリックは早い段階で、どちらの陣営を支持するか態度を明らかにしていた。1951年に教皇ピウス12世はバチカン宮殿で会議を開き、「ビッグバンはカトリックの公式の教義に矛盾しない」との声明を発表した(とは言っても、これは純粋に科学的なことには、あまり関係のないことであった)これらの宇宙論に関する大きな論争が起きるたびに、新聞の読者たちは熱くなった

ビッグバン理論はキリスト教にとって都合の良い理論だった。なぜなら創造神が否定されつつある世界で少なくともビッグバンには神が関与していたことを主張することが可能だからだ(近頃ホーキング博士がビッグバンへの神の関与を否定したことが話題になったけれど、逆に言えば現在でもそれを科学的に否定することができるか否かが依然として重要な課題だということだ)。


ただし、当のジョルジュ・ルメートルはビッグバン理論が神の創造を証明するものと考えていたわけではないそうだ。
Passion For The Future: ビッグバンの父の真実

だから、時の教皇ピウス12世が、ローマ教皇庁科学アカデミー議長もつとめたルメートルらの発見は神の創造を科学的に証明したものだと発言した際には、頭を抱えてしまった。後に、それとこれとは関係ないのですと教皇に進言しさえもした。


だが、彼の理論は、
ジョルジュ・ルメートル - Wikipedia

ルメートルのこの説は当時の科学界に激しい反応を引き起こした。エディントンはルメートルの考え方を不愉快だと感じていた。アインシュタインも彼の理論の正しさに疑いを持っていた。なぜなら、(アインシュタイン自身の言葉によれば)ルメートルの理論はキリスト教天地創造の教義を強く連想させ、物理学の視点からは正当とは認められないものだったからである。これを発端として、宇宙論と宗教の論争が数十年にわたって続くこととなった。この論争の中でルメートルは常に科学と信仰を分けて考えるという立場で根本的な役割を果たす存在となった。

と、アインシュタインでさえ、天地創造の教義を強く連想させ、物理学の視点からは正当とは認められないもの」と評価した。


もちろん、当時の理論はまだまだ問題が多かったから、このような「偏見」が無かったとしても、容易に受け入れられるものではなかったということは言えるだろう。だからこれを根拠に突飛な説を受け入れない科学界を批判するのは適切ではない。とはいえ、科学界といえども、このような偏見を持つことは往々にしてあるということは意識しといたほうがいいだろう。


最近でも超光速ニュートリノの話題で「相対性理論否定論者を喜ばせる」などという理由で必要以上に否定する人を見かけたが、そういう態度は結果的に超光速ニュートリノが肯定されようが否定されようが好ましいものには思えない。


そして、宇宙論の分野ですらこういうことがあるのだから、ましてや実験や観測で立証することが可能ではないことが多い歴史学などの分野では、このような偏見が研究を阻害しているケースはいくらでもあるだろうと思うのである。