ホーキング神の不在を語る

ホーキング博士曰く「ビッグバンに神の介在は無い」 - スラッシュドット・ジャパン

ホーキング博士は最新の著書「The Grand Design」の中で、ビッグバンに神の介在は無いと断言しているそうだ (guardian.co.uk の記事、東亜日報の記事、本家 /. 記事より) 。

ビッグバンは神の存在の介在によるものではなく、物理法則による必然の結果であるとのこと。また、ホーキング博士は重力の法則が存在するがため無から宇宙が創られるのであり、これからもそれは変わらないと述べた。自然の創造によって無ではない有が存在しており、我々を含む宇宙が存在していると博士は説明する。全ては物理法則によるものであり、神が出てきて宇宙を創造する必要はないと述べたそうだ。

ちなみにホーキング博士は 1988 年のベストセラー「ホーキング宇宙を語る」の中で「完全な理論を見出せれば、人間の理性の究極の勝利ととなるであろう。そのとき我々は神の心を知るのだから。」という趣旨の発言をしているとのことだ。


ホーキング博士は以前から神の不在について語っている。

宇宙にはじまりがあるかぎり、宇宙には創造主がいると想定することができる。だがもし、宇宙が本当にまったく自己完結的であり、境界や縁をもたないとすれば、はじまりも終わりもないことになる。宇宙はただ単に存在するものである。だとすると、創造主の出番はどこにあるのだろう?

(『ホーキング、宇宙を語る』 林一翻訳 早川書房 1989年)

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで

ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで


それに対する、物理学者であり、また英国国教会の司祭でもあるジョン・ポーキングホーンの反論。

これは神学的にあまりに素朴であって「神はすべての場所に遍在し、すべてのものの任命者であって、万物が進行するのを司る」という創造主の存在に関する問いに答えるものではないと、私には思われる。神は礼服を着て、宇宙の端にいて、宇宙の始まりに興味をもっているだけではない。この宇宙で起こるすべてのショーに関わるのが神なのである。神とか神の創造の業のことを考えるためには、このショー全体の進行に注意しなければならない。S・ホーキング博士の文脈では宇宙の起源の問題は、この宇宙の歴史のなかで起こるすべての出来事のごく一部でしかないことになる。

(『科学者は神を信じられるか』小野寺一清翻訳 講談社 2001年)

科学者は神を信じられるか―クォーク、カオスとキリスト教のはざまで (ブルーバックス)

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ホーキングは神を宇宙の外部に追い出して、宇宙への関与を拒絶しようとしているけれど、それは神とはどのようなものかについての浅はかな理解であるとポーキングホーンは批判しているってことなんでしょうかね。


俺は物理学にも神学にも素人だから、わからないところがいっぱいあるけど。そこんところは、これから誰か詳しい人が解説してくれることを期待。


(追記)ちょっと考えてみたんだけれど、ホーキングの考える神は、日本のアマテラスのように高天原みたいなところにいて、世の中を見渡しているというようなイメージに近くて、ポーキングホーンの場合は八百万の神々のように、ありとあらゆるところに遍く存在しているというようなイメージに近いとか?もちろん八百万の神々はそれぞれ別個の存在だから唯一神と一緒にするなと言われればその通りなんだけれど。