100%高木先生の勝利?

高木浩光×樋渡啓祐@武雄市長、図書館の戦いを見物する: やまもといちろうBLOG(ブログ)

 理屈だけ考えますと、100%高木先生の勝利であります。もうね、10対0。1985年の阪神と中畑DeNAベイスぐらいの差があるわけです。っていうか、樋渡市長は反論になってないんだよね。

高木浩光武雄市長のバトルがネットで話題になっていることは知っていたけれど俺は関心がなかった。で、この手の話題に関心がある人というのは、ITに詳しい、または強い関心がある人が多いのではないかと思うけれど、そういう人達の反応は概ね高木氏支持であるように思われ。


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はてなブックマーク - 高木浩光@自宅の日記 - 「個人情報」定義の弊害、とうとう地方公共団体にまで
はてなブックマーク - 武雄市長物語 : 高木浩光先生、間違ってます。
の反応も大体そんな感じ。


図書館利用にTカードが必要だというのは「何だかなあ」とは俺も思う。武雄市民じゃないから賛成も反対もしないけど、地元だったら反対する。


でも高木氏の主張も変だと思う。
高木浩光@自宅の日記 - 「個人情報」定義の弊害、とうとう地方公共団体にまで


高木氏は4月27日のNHK総合テレビ「情報LIVEただイマ!」で放送された事例を紹介する。元記事を見るとこう書いてある。

不思議!?グッドタイミングで届くクーポン
近年、インターネットクーポンを活用する人の中で、お得だけれども不思議な事が起きているそうです。それは「なぜか化粧水が切れそうになったら、そのグッドタイミングで化粧水のクーポンメールが届く」という現象。その謎を解くカギは「行動履歴」。この場合の行動履歴とは、私達が通販サイトのどのページで、何を買ったのかという、いわば「ネット上での足跡」です。通販サイト運営側などには、私達の行動履歴が蓄積されていきます。この行動履歴を分析する事で、ユーザーが便利に感じるサービスを提供できると言うのです。
例えば「お米を買ったら、一か月後にはきれる」など商品には消費サイクルがあります。行動履歴から物を買ったタイミングが分かれば、ちょうど商品が切れそうなときにお知らせをする事ができるというんです。
ただし、こうしたサービスはまだ発展途上の分野で、企業も試行錯誤を繰り返している最中です。すべての商品においてグッドタイミングでクーポンが届く訳ではありません。また番組で紹介した行動履歴の分析は個人を特定出来ないようにグループ化したデータを分析しています。個人情報保護法に触れたり、個人のプライバシーを侵害する情報の分析は紹介していません。

不況ニッポンの救世主!?クーポン新時代, 情報LIVEただイマ!, NHK総合テレビ, 2012年4月27日

それに対し高木氏は

これは言っていることがおかしい。「個人を特定出来ないようにグループ化」したというのに、いったいどうやって、その個人に届けることができるというのだろう?

と言う。しかし、記事には「通販サイト運営側などには、私達の行動履歴が蓄積されていきます」と書いてある。すなわち化粧水を買った人を仮に「田中さん」とすれば、「田中さん」という特定された個人が化粧水をいつ買ったかを通販サイトは把握している。そして「田中さん」が買った化粧水が切れそうな時期に化粧水のクーポンメールを送信したということでしょう。


これのどこが「おかしい」だろうか?そんなことはネットでなくても、普通の商店でもやっているところはあるし、法的にも道徳的にもおかしいとは俺は思わない。


確かにNHKの記事には

また番組で紹介した行動履歴の分析は個人を特定出来ないようにグループ化したデータを分析しています。

と「個人を特定出来ない」云々とある。だが、ここにある「行動履歴の分析」は上の事例とは別件ではなかろうか?


前半の「化粧水」の話は「行動履歴」とは何かという説明の話であって、後半がそれを分析する(「行動履歴の分析」)という話であって、高木氏はそれをごっちゃにしているように俺は思う。


後半の「お米を買ったら、一か月後にはきれる」という「行動履歴の分析」は、特定の「鈴木さん」や「佐藤さん」が「米を買って次に米を買うまでの期間は?」ではなく、匿名化した「Aさん」「Bさん」などの複数の情報を元に、米の消費サイクルを導き出すということでしょう。


で、「化粧水」の話に戻れば、「化粧水の消費サイクル」は匿名の「行動履歴の分析」によるものであり、「田中さん」がいつ化粧水を買ったのかは実名の「行動履歴」によるものだということになるでしょう。


以上により、高木氏は「おかしい」とおっしゃるけれども、俺にはちっともおかしいとは思えない。ITに詳しい人が多いであろう、はてなの方々がなぜこういうツッコミを入れないのか不思議だ。


※ なお上に書いたように、だからといって図書館利用にTカードが必要だということを歓迎しているわけではない。それはまた別の話。