ソジャーナ・トゥルース 

 ちくま学芸文庫の『乳房論』を読んでいたら、まあいい翻訳なのだが、ソジャナー・トゥルースという黒人女性の話で引っかかった。これは1858年インディアナ州で黒人奴隷解放運動家の黒人女性が話をしていたら、「奴隷制支持者の一群が彼女の性的アイデンティティに挑んだ」とあり、ソジャナーは乳房をあらわにして、「あたしは女じゃないってのかい?」と言ったという。

 これは近頃有名になった話らしいのだが、この訳文はいかにも生硬で、おそらく訳者は、実際は何が起きたのかわかっていなかったのだろう。調べたが、どうも「女は黙ってろ」みたいなことを言われたらしい。98年単行本、2005年文庫だから、ここは直せたと思う。

2012-06-28 - 猫を償うに猫をもってせよ


「ソジャナー・トゥルース」よりも「ソジャーナ・トゥルース」で検索した方が多くヒットする。


科学と芸術ー尊い人命
ここに『乳房論』の一部が引用されている。肝心の部分が略されているのだが、まさに「黒人奴隷解放運動家」として描かれているようにみえる。確かに彼女は「黒人奴隷解放運動家」だが、このスピーチは「女性の権利獲得をめざす会議」で行われたもの。
N・I・ペインターによるS・トゥルース論と歴史記述の主体について : フェミニスト歴史学に対する創造的批判の試み


翻訳が問題なのか、それとも原文自体がそういう記述なのだろうか不明


「女は黙ってろ」というのはちょっと調べてもわからない。「黙ってろ」というか「(黒人の)彼女に話をさせるな」みたいなのはあったようだ。


ただ、それと「あたしは女じゃないってのかい?」とは文脈上のつながりはないように思われる。黒人女性は女性扱いされていなかった。かよわい存在として扱われてなかった。なのに女性が権利を主張すると、かよわい存在だからと拒否するのは矛盾している。女性は力を持っている。というような意味で言っているのだと思われ。


Ain't I a Woman? - Wikipedia, the free encyclopedia


いつもの言っている通り、俺は英語苦手なので間違ってるかもしれない。


(追記)
あと

奴隷制支持者の一群が彼女の性的アイデンティティに挑んだ」

というのが、ジーン・フェイガン・イェリンの著書に書かれている

背が高く肌の色が黒いソジャナー・トゥルースが立ち上がり、女性性を再定義する演説をした。

と似ているようで意味が全く違うところが気になる。別の話なのか、話がどこかで曲がってしまったのか。
N・I・ペインターによるS・トゥルース論と歴史記述の主体について : フェミニスト歴史学に対する創造的批判の試み