「当時の人はよく知っていた」

江戸時代の終りがいつなのかについては複数の説があるようだ。

終期については、徳川慶喜大政奉還明治天皇に上奏した1867年11月9日(慶応3年10月14日)とする見方や、王政復古の大号令によって明治政府樹立を宣言した1868年1月3日(慶応3年12月9日)とする見方も存在する。

江戸時代 - Wikipedia


仮に1867年11月9日説を採用すれば、その前日に生まれた人は江戸時代生まれで、現在生きていれば146歳となるが、そういう方はいらっしゃらない。日本最後の江戸時代生まれの人とされているのは「河本にわ」という女性で1976年に満113歳で亡くなっている。
日本最後の一覧 - Wikipedia


江戸時代最後の日に生まれた人は1950年1月には82歳であり存命の人は相当いたはずだ。もっとも生まれたばかりだから江戸時代の記憶は残っていなかっただろう。さらに10年前の1940年1月だったら当時10歳の人が82歳で、さらに1930年だったら当時20歳の人が82歳ということになる。


なお当人が江戸時代に生まれていないとしても両親・祖父母が江戸時代に生きていた人なら、当時のことを教えてもらっただろう。現在日本最高齢の人が生まれたときに勝海舟やジョン万次郎が存命だった。


何でこんなことを書いているかというと、たとえば「江戸時代の庶民には名字が無かったという説があるが『最近の研究では』庶民も名字を持っていたという」ようなことが言われたりすることが気になったからである。これが室町時代の話だとしたら特に何とも思わないけれど、一昔前には江戸時代のことを知っている人が生きていたのだ。江戸時代の話といっても「孝明天皇の死の真相」みたいな話は当時の人だって一部の人以外は知る由もないことだけれど、庶民に名字があったかなんて話は「当時の人はよく知っていた」ことであろう。なんか不思議。


もっとも、この手の話はアバウトな説明ばっかりで、「最近の研究」の「最近」とはいつのことなのか?「庶民に名字がなかった」という説はどのレベルで言われていた話なのか?俗説なのか?歴史学者もそう言っていたのか?その説はいつからあったのか?というようなことがさっぱりわからないのである。