図書館が格差解消に役立つのかという話と「反知性主義」

図書館は格差解消に役立っているのか? / 片山ふみ・野口康人・岡部晋典 | SYNODOS -シノドス-

映画『スリーパーズ』(Sleepers)の主人公の一人であるマイケルは、ヘルズ・キッチン(地獄の調理場)と呼ばれるスラムで育ったが、少年院の図書室において独学で勉強し、地方検事になった。このようにアメリカの図書館は、あらゆる人が無料で利用できる開かれた教育施設であり、極端な例を挙げればホームレスが億万長者になるような階層の流動化に寄与する役割をもつとされている。(注)

そもそも論として、文学全集とか歴史の本とか伝記を読んだって、あるいは和歌や俳句や詩集の本を読んだって、哲学の本を読んだって、それが収入に結びつくケースは極めて稀でしょう。


上のケースでは地方検事になったとあるけれど、地方検事になるための勉学に必要な本はそのようなものではないと思われ。じゃあどういう本が必要なのかというのは俺はよく知らないけれども、もちろんそれに必要な本は日本の図書館にも置いてあるだろうけれど、利用するのに便利なようになっているのだろうか?


そしてアメリカにおいてはどういう状況なのだろうか?その知識は俺には全くないけれども、アメリカといえば、近頃そこそこ話題の反知性主義の国である。「反知性主義」とは何ぞやというのが実のところよくわかららいんだけれども、一つの考え方としては、哲学やなんやらといった、「ただちには役に立たない教養よりも、実用に役立つ知識を重視する」という面があると思われ。


もし、そういう思想がアメリカの図書館にも反映されているものならば、日本の図書館とは単純に比較できないよな、なんて思ったりして。そうだとするとhamachan先生のこの記事とも多少関連があったりして。
hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)



でも、俺はアメリカの図書館について何も知らないので、本当にそうなのかはわからない。上のケースでは「少年院の図書室」なので刑法に関する書籍が充実しているってだけの話なのかもしれない。


(追記 17:39)
スリーパーズ』は実話ではない。

原作(および映画)は当時、ノンフィクションと謳われ、著者のロレンツォ・カルカテラ(英語版)が少年院で体験した仕打ちと復讐を綴った小説とされ、ベストセラーになった。だが、実際には本にあるような看守殺害の裁判の記録は一切なく、裁判所と検事局は事実無根であると声明を出した。またロレンツォが学校を長期欠席、または退学した事実はなく、少年院へ行っていないことが判明した。

スリーパーズ - Wikipedia


『未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― 』のアマゾンのレビューを見ると、

公立図書館の充実は、「(1)組織の後ろ盾を持たない市民の調査能力を高める、(2)新規事業の誕生を促し、経済活動を活性化させる、(3)文化・芸術関連の新たな才能を育てる、(4)多様な観点から物事を考え、新たな価値を生み出す、(5)コンピュータを使いこなす能力をはじめ、市民の情報活用能力を強化する」ということ。

とあり、「生きていくためのノウハウ」を身に付けることを目的としているのに対して、シノドス論文では

身体化された文化資本は「博物館・美術館・史跡などを訪れる」「コンサート、演劇などを観に行く」の項目を参照した。

なんて話をしているのであり話が大きくズレているのである。

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)