八陣守護城(その2)

八陣守護城(その1)

家康がモデルになっている人物を「狸親仁」呼ばわりする「八陣守護城」。前の記事で参照したのは国立国会図書館デジタルコレクションの『日本戯曲全集. 第二十八卷』。家康とされる人物の名は「北畠春雄」幼君は「小田春若丸」で、これは明らかに北畠信雄と織田三法師をもじったもの。加藤清正は「佐藤政清」。解説によれば底本は明治2年森田座で「高麗陣帰朝入船」と題されたものだという。


日本大百科全書(ニッポニカ)の解説にも「北畑春雄(徳川家康を諷(ふう)す)」とある。
八陣守護城(はちじんしゅごのほんじょう)とは - コトバンク


ところが『八陣守護城 : 解説. 政清本城の段』では家康は「北第(北條)時政」となっている。加藤清正は「佐藤政清」で上に同じ。『浄瑠璃注釈 : 傑作百段. 第1編』でも家康は「時政」で加藤清正は「加藤政清」。北條時政ということは幼君は源実朝ってことになるんだろうか。どっちも「北」なのはこだわりか?


「浄曲百段語り物の訳」によると、丸本は小田春雄、床本は北條時政なのだそうだ。
丸本(まるほん)とは - コトバンク
床本(ゆかほん)とは - コトバンク
床本は公演の際に使用するから憚って少し前の時代の人物「織田信雄」をもじった「北畠春雄」ではなく、ずっと前の人物の「北條時政」にしたってことだろうか?どっちにしろ家康を連想させるのは明らかだからヤバさに大した違いはないと思うけど。


それにしても『日本戯曲全集. 第二十八卷』の解説に

繪本太閤記さへ絶版の憂目に遭つた時代にこの浄瑠璃が無事に上演し得たのは、全く不思議と云つてもよろしい

とあるが、全く同感である。