経済財政諮問会議での丹羽宇一郎氏の発言について

痛いニュース(ノ∀`):【残業代ゼロ】「若い奴は残業代ナシでも土日に仕事したい」 伊藤忠商事会長、経済財政諮問会議で


経済財政諮問会議での丹羽宇一郎氏は発言が叩かれる。


切込隊長BLOG(ブログ) - 「若い奴は残業代ナシでも土日に仕事したい」@丹羽宇一郎・伊藤忠会長は失言か?
で、「話の文脈がまったく逆」と切込隊長氏。


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その他に、同意するコメント。いまここ。


それでは原文を読んでみよう。
平成19年第1回経済財政諮問会議議事要旨
確かに、切込隊長氏の言うとおり、

格差是正のために最低賃金法の金額を引き上げ逸脱業者の罰則を強化すべきとか、家で仕事はさせたくないが会社に来られても残業代を払うことになる事情から自由労働時間制がいいんじゃないかとか

というようなことを発言している。


でも、「痛いニュース(ノ∀`)」に書かれている、

若い人でも、残業代は要らないから出社したいという人がたくさんいる。しかし、経営者がしてもらっては困ると言っている。なぜなら出社されると残業代を全部払わなければいけない。家で仕事をするよりも、会社に来て色々な資料もあるし、これで自分が人よりも早く仕事を覚えて仕事をしたいんだと。それを今は仕事をするなと言っている。ホワイトカラーエグゼンプションの制度がないからだ。

は、しっかり発言している。で、叩かれているのはこの部分。これと逆のことが書かれているわけではない。切込隊長氏が取り上げた「格差是正のために最低賃金法の金額を引き上げ逸脱業者の罰則を強化すべきとか」の部分は、「格差問題」についての発言であり、「ホワイトカラーエグゼンプション」についての発言ではない。従って、これでもって「ホワイトカラーエグゼンプション」について「話の文脈がまったく逆」なのでは決してない。切込隊長氏に釣られてはいけない。


それを踏まえて、丹羽氏がホワイトカラーエグゼンプションについて、何を発言しているのかというと、丹羽氏は、残業代はいらないからもっとスキルを身につけたい若い人がいても、現行の制度では残業代を払わなければならないので、会社側は歓迎しないということを述べているが、これが、やる気のある人が伸びる機会を奪っていて、日本の産業にとってマイナスになるということを憂えているのである。これを何とかしなければならない。だが、一方で働きすぎて過労死するなどの問題も起きる。それに対しては内部告発や罰則の強化で対応する必要がある。要するに影の部分だけを取り上げて、全てがだめだということではなく、影の部分への対策を施すことで、光の部分を生かそうではないかと言っているのである。


影の部分だけを見て叩くのは確かに問題があるが、直接関係ない部分を取り上げて擁護するのも、また問題がある。


で、さっき切込隊長BLOGを読み返したら追記があって、dankogai氏の反応について触れられている。しかし、上記のような話には触れられていない。この人達は本当に「丹羽宇一郎氏の発言」について論じようとしているのだろうかと思ってしまう。それとは別のことについて発言したいための「ネタ」として取り上げているだけではなかろうか。


もちろん、丹羽氏の発言には影の部分として「過労死」が取り上げられているが、「残業代」が臨時収入というよりは、実質的に生活費に組み込まれているという実態が具体的に取り上げられていないなど、論じるべき点は多いと思う。それはそれとして論じればいいと思うが、まずはちゃんと読むべきなのではなかろうか。


(追記)
読み返したら、ちょっと誤解されそうな部分があるので付け加えておけば、そもそも「痛いニュース(ノ∀`)」の抜粋を読めば、「土曜日曜も会社来てスキルアップのためにタダで働け馬鹿」という内容ではないことは、別に前後の文脈を見なくてもわかること。それに批判的な反応があったのは、文脈を理解できなかったというよりも、「裏」を読んで反応したということであって、「裏」を読んだ人は、前後の文脈を見てもやはり、「裏」があるんだろと思うだろう(単なる誤読の人もいるかもしれないが)。だから、それに対する反論は、発言をそのまんま受け取るべきというものではないのだろうか。ただ、実際に切込氏の「反論」で納得してしまう人もいそうなので話はややこしい。