貯蓄率低下の要因(その2)

俺の疑問についての答えが見つかりそうなレポートがあった。
国際比較で見る家計の貯蓄率と資金フローの動向−世界的な住宅ブーム終焉で基調は再び変わるのか?ニッセイ基礎研究所


「ケインズ的」理由によって生じた貯蓄率の低下 - ラスカルの備忘録

 また、主要国の家計貯蓄率の推移をみると、1990 年代後半から2000年代初頭にかけて、日本の貯蓄率だけが著しく低下しているのが特徴的である。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4520.html

一方、ニッセイのレポートでは、1996年に日本の貯蓄率は分析対象18カ国の6番目だったのが2006年に8番目にとどまっていることを指摘している。

順位の下がり方が小さいのは、他の国でも貯蓄率低下が起きたからである。

18カ国のうち貯蓄率が「ほとんど変化しなかった国」はフランス・スイス・ドイツの3カ国。


図録▽主要国の家計貯蓄率の推移
で、取り上げられているのは、フランス・ドイツ・イタリア・日本・韓国・スウェーデン・米国の7カ国。ニッセイレポートでは、のうちフランス・ドイツが「ほとんど変化しなかった国」であり、スウェーデンは「短期間に上昇下落した国」。米国は「もともとの貯蓄率も高くなかったがさらに低下した」。残る日本・韓国・イタリアは「大幅に低下した」。


「主要国の家計貯蓄率の推移」には、

 退職者が増えれば貯金を取り崩し貯蓄より消費が上回る者が多くなる筈であるので、高齢化は貯蓄率の低下を招くとされる。近年の日本の家計貯蓄率の低下は高齢化によるものとされるのが一般的である。ところが、日本と同様、高齢化が進んでいるドイツ、フランスでは貯蓄率が必ずしも減っていない(イタリアは日本と同様貯蓄率低下傾向)し、それほど高齢化が進んでいない韓国で貯蓄率が低下しているのも理解できない。また家計に対する調査からは年齢別の貯蓄率を計算しても必ずしも高齢者の貯蓄率が低いと言いきれないという研究結果も出ている。

とあり、ドイツ、フランスはその通りだが、韓国が「それほど高齢化が進んでいない」というのは、おそらく絶対値のことを言っているものと思われ、しかし、ここで重要なのは高齢者の増加率であるはずであり、ニッセイのレポートには、

実は、65歳以上人口の割合で見た高齢化の進行が最も急速だった上位2カ国が日本と韓国であり、この2カ国の貯蓄率低下は高齢化によるものと考えられる。

と書いてある。レポートにある表を見ると、65歳以上人口の割合は1996年に日本は15.1%だったのが2006年に20.8%、韓国は6.1%だったのが9.5%。進行の度合いでいえば韓国の方が急速に高齢化が進んでいるし、貯蓄率の低下も著しい。


また、

日本と比べれば、欧米先進国の大半では、高齢化は緩やかな速度で進行している。それどころか、2006年までの10年間に限れば、65歳以上人口の割合がほとんど上昇していない国が2カ国、逆に低下した国が4カ国もある。


欧米諸国の中で、この10年間に高齢化が進展した国で目立つのはイタリアとドイツ(枢軸国なのが関係するのだろうか?)。このうちイタリアは貯蓄率が大幅に低下した国。


となると、逆にドイツの貯蓄率が低下していない方が例外になるが、それがなぜかというと、

ITバブル崩壊後の低成長の期間が他の欧州諸国と比べて長く、所得の伸び悩みが消費低迷・貯蓄率上昇の要因となって、高齢化による貯蓄率押し下げ効果を相殺したものと考えられる。実質住宅価格も下落基調にあったので、住宅の逆資産効果による貯蓄率押し上げ効果が働いていた可能性もある。

とあり、「所得の伸び悩み」が高齢化による貯蓄率低下を相殺した原因だとみている。


詳しいことは直接レポートを見ることをお勧めするけれど、俺はこの分析の方を信用しますね。