世界に広がる「ドナドナ=アドナイ」説

「ドナドナ」の「ドナ」がドイツ語で「わが主」を意味する「アドナイ」の短縮形だという説はいまだに結構いる模様。


この説には二つの段階があって、ツプフガイゲンハンゼルという西ドイツのバンドが1985年に出した『イディッシュ歌集』のライナー・ノートに、

1942年にかれの妻と11歳と14歳の息子たちは「強制移住」をさせられて殺された。ワルシャワ・ゲットーからアウシュヴィッツ絶滅収容所への、このときの移送の印象のもとでイツハク・カツェネルソンは子牛の歌を書いたのである。

ドナ・ドナ2
とあることに始まる。しかし、ドナドナはそれより前の1940年にアメリカで上演されたミュージカル「エスターケ」に使われていた。



次に、この話を知った日本人が、「ドナ」は「アドナイ」の短縮形であると考えて取材したところ、

 エルサレムヘブライ大学でイディッシュ文学を専攻している学生からは、「アドナイ」の短縮形が「ドナ」になることは絶対にない、と明確に否定までされてしまったのです。

ドナドナの謎 歌詞の解説・ルーツ・作詞者の謎など 2-2
という結論になってしまったのであった。


すなわち「ドナ=アドナイ」説は、そういう言い伝えがあったとかいう話ではなくて、しかも欧米で発生した説でもなくて、日本人の思いつきにすぎなく、しかも当のユダヤ人に否定されているのであった。


だから、当然のことながら「ドナ=アドナイ」説はほぼ日本でしか流通していない説であった。


つい最近までは…


ところが英語版ウィキペディアを見てみると、なんとそこには、

The song's title is a variant on Adonai, a Jewish name for God.

と書いてあるのだ。編集されたのは2010年6月22日。
Donna Donna - Wikipedia, the free encyclopedia


さらに、ドイツ語版ウィキペディアも2009年9月20日

die Kurzform von Adonai, der im Hebr〓ischen 〓blichen Anrede von Gott.

Donna Donna – Wikipedia
と付け加えられているのであった。