神武天皇は実在した!!

【消えた偉人・物語】神武天皇 古代史学の進展で実在確かに - MSN産経ニュース
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まず言っておきたいのは神武天皇実在説といっても、記紀神武天皇と記される人物の事跡が正確だとは言わないまでも何らかの史実が反映されているという説は別にトンデモでもなんでもなく正当な研究であり世に溢れているということ。ブックマークコメントを見ていると、そういうのでさえトンデモ視されているのではないかという懸念があるので書いておく(ちなみに俺はその説に同意してないけど)。


だからといって、この渡邊毅という教授の書いた記事にイカレテイル感が漂うのは否めない。また、

このように考古学や古代史学の進展によって、記紀の記述の信憑性は高まり神武天皇のご存在も確かなものになってきている。

などということもない。


ところでこの記事にある、角林文雄氏の

記紀神武天皇を東南アジアに出自をもつ熊襲族の人として描いた。そんなことは後の皇室・貴族にとってなにか素晴らしいこと、誇るべきこととはとうてい考えられない。しかるにそのことを明確に、紛れもなく記述しているのだからそれが真実と考えるのが常識ではなかろうか」(『日本国誕生の風景』)

という主張は、記紀のどこに神武天皇が「東南アジアに出自をもつ熊襲族の人」だと描いているのか全く意味不明だ。見方によっては「不敬」ですらある。こういう立場の人がこんな主張を肯定的に引用しちゃっていいのか?と心配してしまう…


この角林文雄という人物を俺はよく知らないけれど、

1940年大阪市生まれ。立命館大学文学部修士課程終了。1981年オーストラリア・クィーンズランド大学Ph.D.。クィーンズランド大学歴史学科シニア・テューター、ニュージーランド・マッセー大学東アジア学科講師を歴任

アマテラスの原風景 (塙選書)
とあり、歴とした学者であり、しかも検索してみたところでは、泡沫学者ではなく、他の学者によってしばしば言及されている著名な学者のようだ。



なお、不利な情報が載っているから真実と考えるべきという論法は、この前書いた中国大返しにしろ、『太閤記』を軽視して『太閤素性記』を重視していることにせよ、歴史上の英雄が親から嫌われていたという話にせよ、この論法が使われている例は多々あるが、お粗末な「史料批判」だと俺は考えている。そもそもどういう基準で不利だと言っているのか怪しげな場合が多いし。