最低賃金廃止の素朴な疑問(その2)

最低賃金を廃止して生活に不足する分は公的に補うというのは、「負の所得税」の考えを採用したんだろう。
負の所得税 - Wikipedia


新自由主義者ミルトン・フリードマンが提唱しているんで新自由主義的な主張のように考えられているんだろうけれど、これを実際に運用したら小さな政府どころか巨大な政府になるようにしか思えない。


ウィキペディアにも

他の批判として、NITにおける受納者は失業時政府給付に等しい最低賃金を保証されるため、NITは労働へのインセンティブを減じうる、というものがある。

みたいなことが書かれている。


現在の日本では最高の東京都で850円である。ということは1日8時間労働で月20日働けば、13万6千円の収入という計算になる。一方、生活保護受給額を見ると「東京都区部(1級地-1)・単身・31歳」で「合計 137,400円(月額最大)」になっている。
生活保護 - Wikipedia


すなわち、現在の日本の最低賃金は、健康で文化的な生活が可能な最低限の額だということだ。それを減額するということは、持ち家や同居などで家賃を払う必要のない人や、親族などに援助を受けている人以外は生活が立ち行かなくなるということだ。


たとえば最低賃金が1500円で規制を廃止して1000円に下がったとして生活が苦しくなるとはいっても立ち行かなくはならないが、850円をさらに下げたらたちまち生活が破綻する人が出てくるということだ。そしてそれを公的に補うということは公的負担が増えるということだ。


しかも、最低賃金が1500円で100円下がって1400円になったから下がった分の半分の50円を補填しますみたいな話とは違って、850円は生活可能な最低限の額だから、700円に下がれば下がった分の全額の150円を補填しなければならない。600円に下がれば250円だ。


ということは850円以下であれば、何円であろうと時給850円の時と同じ金額を受け取れるということになる。であれば既に書いたが雇用する側にとっては人件費は低ければ低いほど良いに決まってるし、雇われる方も850円以上の職に就けるのなら別だが、それ以下なら何円でも1円だって構わないということになる。であれば850円で雇用するのはアホらしい。みんな1円で雇用契約をするのではないか?そして財政はあっという間に破綻する。


ただし、人件費が減った分、企業の利益が増えるが、市場競争があるので商品の価格は下がるのであり、人件費で苦しむ企業は一時的には助かるかもしれないが、やがて人件費以外のコスト競争で敗退することになるだろう。もちろん正社員を高い賃金で雇用している企業も経営が傾くことになるだろう。


細かいことを言えば、物価が下落するので、その点では財政負担が若干減るかもしれないが、到底増大する負担と相殺することは不可能だろう。また国際競争力は上るだろうが、要は輸出品に補助金を付けているようなものだ。


これはあくまで新聞記事を読んだ感想であり、それを防ぐ何らかの方策があるのかもしれないが、どういう方策があるのか思いもよらない。


あと、最低賃金廃止に反対している人は左向きの人の方が多いような気がするけれど、補填があるのだとすれば、むしろこれは社会主義的な方向の政策であるようにしか俺には思えない。あくまで記事を正直に信じればの話だが。


と、経済ド素人の俺は思うんだけど…