民主主義について

 僕は今、(憲法改正案の発議要件の衆参)3分の2(議席)という話がよく出ていますが、ドイツはヒトラーは、民主主義によって、きちんとした議会で多数を握って、ヒトラー出てきたんですよ。ヒトラーはいかにも軍事力で(政権を)とったように思われる。全然違いますよ。ヒトラーは、選挙で選ばれたんだから。ドイツ国民はヒトラーを選んだんですよ。間違わないでください。

朝日新聞デジタル:麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細 - 政治

確かに「民主主義によって」と発言している。さて「民主主義」とは何か。

人民が権力を所有し行使する政治形態。古代ギリシャに始まり、17、18世紀の市民革命を経て成立した近代国家の主要な政治原理および政治形態となった。近代民主主義においては、国民主権基本的人権・法の支配・権力の分立などが重要とされる。現代では政治形態だけでなく、広く一般に、人間の自由と平等を尊重する立場をいう。デモクラシー。

「みんしゅ‐しゅぎ【民主主義】」 の意味とは - Yahoo!辞書


「現代では政治形態だけでなく、広く一般に、人間の自由と平等を尊重する立場をいう」というが、もちろん市民革命が「17、18世紀の市民革命」の時点でそれが民主主義の理想だった。ただし、当時は民主主義の政治形態が実現すれば自ずと「人間の自由と平等を尊重する」社会になるという無邪気な考えがあった。


しかし、そうはならなかった。何もナチスだけではない。またヒトラースターリンなどの個人の問題だけでもない。

大衆という観念は十九世紀になって発展し、広まった。この観念はトクヴィルにおいて顕著であって、彼は民主政の大きな危険のひとつは、第一に大衆を生みだしたこと ― 多数派の強調によって、また国民を均一化する傾向のある平等主義的価値によって ― であり、第二に人民投票的独裁をもたらす大衆への依存を強めたことであると考えた。

主としてヒットラーのドイツを念頭におきながら、ピーター・ドラッカーは「大衆の絶望がファシズムを理解するかぎである」と書いている。「古い秩序の崩壊と新しい秩序の不在によって引き起こされた寒々とした絶望感」がなければ、「群衆の反乱」も「破廉恥なプロパガンダの勝利」もありえなかった。『経済人の終焉』でドラッカーは、これこそ全体主義国家の起源であり、かつまたその存在理由であると結論している。

保守主義 ― 夢と現実』(ロバート・ニスベット 昭和堂


この「民主主義」における問題を克服する必要があるが、現代においてもなお課題のまま残っている。今まさにエジプトで起きている問題は、まさにこれだ。


麻生氏が、

僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、しかし、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)のなかで決めてほしくない。

と言うのは、まさにそういうことを念頭において言っているのである。


麻生氏のこの発言が危険だという。ナチスは民主主義で政権を獲得したのではないという言いたいのだろう。しかしそれは麻生氏が言う「民主主義」を曲解している。


もう、何としてでも麻生氏を批判せずには置けないのだろう。もちろん政治的な立ち位置が全く異なるのだから、その方面で批判するのは当然のことだが、これではただの揚げ足取りにすぎない。