かぐや姫は月の世界で罪を犯したと考えるのが一般的なようだが果たしてそうか?
それについて原文に重要な記述がある。
おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり。それを昔の契りありけるによりてなむ、この世界にはまうで来たりける。
かぐや姫が地上にきたのは「昔の契り」があるからだというのだ。
※ なお、
かぐや姫は、罪をつくり給へりければ、かく賤(いや)しきおのれがもとに、しばしおはしつるなり。
というのは月の「王」の発言であり、王に言わせれば「罪をつくったからだ」ということになり、かぐや姫に言わせれば「昔の契りがあったからだ」ということになる。これは非常に重要なことだろう。
では「昔の契り」とは一体どういう意味か?これをどう解釈するのかが問題だ。
「竹取物語〜現代語訳」の訳者の方はこれを「前世からの約束」と訳している。俺もそういう意味であろうと思う。
すると、かぐや姫は「前世からの約束」があったので地上に降りてきたことになる。その「前世からの約束」が誰とどこでした約束なのかということが問題になるがその説明はない。
だが、地上に降りてきた理由が「前世からの約束」があったからであるからには、やはりそれは地上において人間と交わした約束なのではなかろうか?
すなわち、前世において地上で人間と交わした約束があったために、その生まれ変わりのかぐや姫は約束を果たすために「生まれてすぐに」地上に降されることになったということではなかろうか?
そして、王からみれば、地上の人間と契りを交わすことは「罪」ということなのだろう。だが契りを交わしてしまった以上は、それを果たさなければならない。それが、
かぐや姫は、罪をつくり給へりければ、かく賤(いや)しきおのれがもとに、しばしおはしつるなり。
ということであり、罰を受けるためとか、罪を償うために流刑にされたとかいった意味ではなく、いわゆる「けじめをつける」ために地上に降されたという意味ではないだろうか?
では、かぐや姫の前世は、一体誰と契りを交わしたのか?ここまでくればもうほとんど結論は出ているようなものだ。
※ かぐや姫は実の両親について
月の都の人にて、父母(ちちはは)あり。かた時の間とて、かの国よりまうで来(こ)しかども、かくこの国にはあまたの年を経ぬるになむありける。かの国の父母のことも覚えず、ここには、かく久しく遊び聞こえて、ならひ奉れり
と語っている。「父母のことも覚えず」とは地上に長くいたので父母のことを忘れてしまったとか思い出さないとかいう意味ではなく、生まれてすぐに地上に降されたので父母のことをよく知らないという意味ではあるまいか?
(つづく)