かぐや姫の「昔の契り」

 「竹取物語ではかぐや姫の心情がほとんど描かれておらず、月に帰ることになったかぐや姫が突然、人間的な感情をあらわにする部分に違和感を抱いていた」「原作にはかぐや姫が月で罪を犯し、『昔の契り(取り決め)』によって、この地に下ろされたとある。その罪が一体何かを示せば、かぐや姫の心情の変化が納得でき、面白い物語になるとずっと思っていた」

東京新聞:かぐや姫の心に迫る 高畑監督 14年ぶり新作:放送芸能(TOKYO Web)



「契り」とは

1 ちぎること。約束。誓い。「師弟の―」

2 男女が情交すること。「一夜の―」

3 前世から定められた宿縁。因縁。「二世(にせ)の―」

「ちぎり【契り】」 の意味とは - Yahoo!辞書


『昔の契り(取り決め)』というのは1の意味に近いことを言っているように思うけれど違和感がある。「昔の契り(取り決め)」とした場合には、月には昔からそのような取り決めがあるというニュアンスになるように思われる。


しかし1の意味だとすれば「昔の契り」というのは、罪を犯すよりも前に「罪を犯した場合には地上に降ろされる」という契約をかぐや姫が誰かと個別に交わしたという意味になるのではないか?だがそれは不自然だ。なぜそんな契約を交わさなければならないのかがわからない。現代の我々は物を盗んだり人を傷つけたりした場合そんな契約を交わさなくても罰せられる。それは昔であっても月であっても同じではないか?


おそらくは、月の王が「かぐや姫は罪をつくったので竹取の翁のところにくることになった」というようなことを言い、一方かぐや姫は「昔の契りで地上に来た」といっていることから、両者を単純に結びつけたのだろう(そういう学説があるのかは知らないが)。


しかし、月の王とかぐや姫の発言は食い違っているのであり、単純に結びつけるべきではない。


究極的には両者の発言は同じことを表現しているのだろうが、両者の立場の違いによって見解が異なっていると考えるべきだろう。そこにかぐや姫の犯した「罪」の謎を解く鍵があると思うのである。


※なおネット上に
『竹取物語』 「しらせ給ひたるかぎり十六そをかみにくとあけて」 考 飯島裕三
という論文に「なぜ両者の発言には違いが見られるのか」と書かれており、学界でもそのことは認識されているようである。