俺の考えでは笹井氏の自殺の原因となったのは3月にストレスによりり約1カ月入院した時点の問題であり、それが結局回復しなかったからだろうと思う。
そのストレスの原因は何かと言えば、STAP論文における小保方氏の画像不正問題によって混乱を引き起こしたことに責任を感じたからであろう。その不正問題にしても「不正を見抜けなかった責任」ではなくて「未熟な彼女に適切なアドバイスをできなかった責任」であろうと思う。
「不正を見抜けなかった責任」については、結果責任として責任を感じてはいただろうけれども、会見を見た印象では、見抜くのは難しかったと考えているという印象を受けた。それに対する批判もあったけれど、俺はそういうものなんだろうと思っていた。ずっと昔に書いたと思うけれど、科学の現場は性善説に基づいているのだ。
一方、STAP細胞が存在するのか否かについては、会見で「STAP細胞を前提にしないと説明できない」という趣旨の発言をしており「STAP現象は、現在最も合理的な仮説」とも言っていた。伝えられる遺書の内容から推察するに、その考えは最後まで捨てていなかったと思われる。
そもそも笹井氏は世界有数の学者であり、ES細胞混入の可能性など当然想定して検討した上で論文を書いたと思われる。無論「弘法にも筆の誤り」でミスした可能性はあるが、疑惑が持ち上がって会見を行った時にも上のような発言をしているし、その後それに対して「ES細胞混入で説明可能」という批判がなされた後も撤回しなかったわけだから余程の自信があるのだろう。したがってそれを理由に自殺することは無いだろうと俺は思う。
もちろん、それをもって笹井氏が正しいというわけにはいかないけれど、少なくとも笹井氏に向けられた批判は笹井氏にとっては批判として不十分なものと認識していたのだろうと思われる。これが素人や三流学者だったら、その人物が無知無能だからということになるけれど、相手は世界有数の学者であるから話は異なってくる。
そのことは批判する側も承知しているだろうから、なぜ笹井氏がその主張を撤回しないのかという謎を合理的に解釈するために「笹井氏はSTAP細胞が存在しないことを知っているにも関わらずそれを認めようとしない」という陰謀論的結論を導き出すということになるのだろう。しかし俺はそのように決め付けるのに躊躇せざるをえないのである。