例の貧困率の件(その2)

そもそも例の女子高生は貧困率の定義に基づいた貧困層にあてはまるのか?いろいろ調べてそのへん怪しくなってきた。


いやもちろんネット上で疑問の声が出てるのは知ってたけど、(可能性はゼロではないけれども)ヤラセはさすがにないだろうと思ってた。ネット上で擁護している意見も大体は彼女が貧困層だということは事実だとして擁護しているのだと思う。相対的貧困絶対的貧困の違いだという説明が大多数だと思う。俺は彼女のアルバイトの収入を加えてないので実は貧困層にはあてはまらないのに貧困層に含まれている可能性を考えた。


でも、そもそも彼女はどういう経緯で取材されたのか?ということを考えたときに別の可能性もあるように思えてきた。


おそらくは、神奈川県主催の「かながわ子どもの貧困対策会議」の「子ども会議」というものが開催され、彼女はそこに出席して貧困家庭の実情を訴えた。NHKがその会議を取材して彼女に注目した。そういう経緯なのではないかと思う。


で、問題は彼女がどうして会議に出席したのかということ。俺はNHKの動画を見て彼女は貧困層の子供の代表として出席したのだと思ってた。しかし、朝日新聞の記事を読むと

対策会議はNPO関係者や有識者ら十数人で構成。会議の中に「子ども部会」を設け、高校生、大学生がメンバーとして参加する。

子どもの貧困対策、高校生が提言 神奈川県が新制度:朝日新聞デジタル
と書いてある。「高校生、大学生がメンバーとして参加する」であって、「貧困層の高校生、大学生がメンバーとして参加する」ではない。朝日中高生新聞ではより詳しく

 神奈川県は今年度「かながわ子どもの貧困対策会議」を立ち上げました。きっかけは昨年8月の「かながわハイスクール議会2015」。高校生が話し合う議会で、子どもの貧困をテーマにした第8委員会が「高校生と、子どもに関する活動をしている大人とで対策会議を作りたい」と知事に提案したことでした。

子どもの貧困解消へアクション! | 1面の記事から | 朝日中高生新聞 | 朝日学生新聞社 ジュニア朝日
と書いてある。これらは8月のイベントじゃないけど「子ども会議」の趣旨はそういうもの。だとすれば、高校生、大学生のメンバーの中に「自分の家庭も貧困だ」と認識している彼女がいて、彼女がそれを会議で訴えたということのように思われる。だとすれば、これは「自己申告」ではないだろか?

部会メンバーのうち2人が、当事者の立場から、参加者に向けて率直にスピーチした。

貧困問う青年の主張 神奈川県対策会議に高校生ら (カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース


貧困者の代表としてメンバーに選ばれたのだとしたら、普通に考えれば県がチェックすると思う(してない可能性もあるけど)。しかし高校生の代表として選ばれて、その会議の中で自己申告したのだとすれば、貧困層の定義にあてはまらない(そもそも定義を知らない)けれども、自分は貧困だと思ってるという可能性はありえる。貧困層にあてはまらなくても生活が苦しい、欲しいものが手に入らないからウチは貧しいんだと感じることは十分ありえる。


NHKのニュースの中では、「自分が貧困かもしれないと感じるきっかけになったものを」というナレーションが入る。これは自分が貧困層の定義にあてはまることを知らなかったけれど「感じていた」というように受け取れる。でも中学時代は知らなかったけれど、今は定義にあてはまることを知っているとも解釈できる。ニュースでは「理由は家庭の収入がある一定水準に満たない貧困状態にあるからです」というナレーションもあるから、そう解釈するのが当然だろう。貧困率の話もちゃんとしてるし。


ところが、「カナロコ」の記事には

 家にはパソコンがなかった。学校の授業ではうまく扱えず、付いていけない。中学校時代には塾に行けなかった。その都度、母や先生に助けられて乗り越えてきた。だが自分は「貧困」に当てはまるのかもしれない−。フォーラムの準備を進める部会に参加して、初めて感じた。

とある。つまり貧困に当てはまる「かもしれない」と最近になって「感じた」という話だ。自分の家庭が貧困層に該当すると確認できたという話ではない。「カナロコ」の記事を読む限りでは。


※ ただし「カナロコ」も「6人に1人」云々と書いているから、彼女が定義上の貧困層にあてはまると考えているようにも思われる。


もちろん記事には書いてないけれども、彼女が確認している可能性はある。しかしそうでない可能性もある。だが、NHKのニュースでは「理由は家庭の収入がある一定水準に満たない貧困状態にあるからです」とナレーションで言っている。だからNHKは取材で彼女か彼女の母親あるいは県に世帯収入を聞いて確認したはずだということになる。普通に考えれば。


しかし。NHKの取材陣が粗忽者で、彼女が言う「貧困」とは「貧困層の定義に当てはまる貧困なのに違いない」と思い込んでいる可能性もありえないことではない。


もちろん、そうではなくて彼女の家は正真正銘の貧困層の定義に当てはまる貧困家庭だという可能性が十分残っているということは、繰り返しになるけど強調しておく。


本当は貧困層ではなかったとしても、俺の推理では、間違いの責任はNHKにあるのであって彼女にあるのではない。ただし彼女が期待に応えようと話を盛った可能性は無くはない(そういう疑惑が出ている)。だが、その場合でも高校生ではあるし、NHKがちゃんと確認していれば起きなかった可能性が高いから、彼女を叩くべきではないと思う。