「アメリカ」の語原
⇒アメリカという名前の発祥はウェールズにあったという事実 - イギリス・ウェールズの歴史ーカムログ
説得力のありそうな話ではある。特に
・新たな地は名字をつけるのが通常で、名前を付けることはしない。もしアメリゴ・ヴェスプッチの名前を用いるのなら、アメリカはヴェスプッチ・ランドのような付け方になる。
ついては、そういえばそうだなと思った。今までそんなこと考えたこともなかった。確かに、クック諸島はジェームズ・クック、タスマニア島はアベル・タスマンから名づけられている。
けれど、これは本当なのか?
ウィキペディアには
1507年、南ドイツの地理学者マルティン・ヴァルトゼーミュラーがアメリゴの『新世界』を収録した『世界誌入門』(Cosmographiae Introductio)を出版した。その付録の世界地図にアメリゴのラテン語名アメリクス・ウェスプキウス (Americus Vespucius) の女性形からこの新大陸にアメリカという名前が付いた。これがアメリカ大陸という名を用いた最初の例となった。
⇒アメリゴ・ヴェスプッチ - Wikipedia
とある。単純にアメリゴがアメリカになったのではなくて、ラテン語名のアメリクスの女性形がアメリカになったそうだ。そういえばコロンビアもコロンブスの女性形である。
しかし、これだけでは名字ではなく名前であることの説明にはならない。
検索すると「世界史の窓」というサイトにそれに関係するのではないかと思われる説明がある(なおこのサイトは前にコロンブスとインドという記事を書いたときにも参考にさせてもらった)。
『世界地理入門』(宇宙誌)では「この大陸を、才知あふれる発見者アメリクス(アメリゴのラテン語形)にちなみ、アメリゲもしくはアメリカと名付ける」と言っている。アメリカはアメリゴの女性形。女性形としたのは、ヨーロッパ、アジアがいずれも(ギリシア神話に出てくる)女性形なのでそれに合わせた。アメリゲというのはアメリ(クス)にギリシア語で土地を意味する「ゲ」を付けたもの。なそ、この文は同書の編者のひとりマティアス=リングマンで、ヴァルトゼーミュラーは地図を作成し、その地図の新大陸の南部にアメリカと書き込んだだけである。<篠原愛人『アメリゴ=ヴェスプッチ』2012 清水書院 人と思想シリーズ p.178>
「アメリカはアメリゴの女性形。女性形としたのは、ヨーロッパ、アジアがいずれも(ギリシア神話に出てくる)女性形なのでそれに合わせた」とある。
ヨーロッパの語原は諸説あるが「エウロペ」説がある。
⇒エウローペー - Wikipedia
アジアの語原も諸説あるがギリシャ神話の女神「アシアー」説がある。
⇒アシアー - Wikipedia
これにちなんで「新大陸」に「発見者(と考えられた)」の名前の方を採用したということではないだろうか?だとすれば名字ではなく名前だからという理由はアメリゴ・ヴェスプッチ説が否定される根拠としては弱いと思われる。※「コロンビア」の場合は大陸ではなくて大陸の植民地を指すと思われ。
一方、アメリックがアメリカの語原になったという説も魅力ある説ではある。ジョン・カボットにリチャード・アメリックが資金援助したというが事実であるならば、アメリカ発見に関わった、アメリカに似た名字を持つ人物がいたというのは偶然では片づけられないように思う。
だが、ジョン・カボットとリチャード・アメリックの関係は立証されているのだろうか?単に同時代にアメリックという交易に関わる人物がイギリスにいたことを根拠に、彼がジョン・カボットと関係があったことという仮説を立てて、それを元にして「アメリックがアメリカの語原説」が作られてる可能性が無きにしも非ずな感じがする。