奈良の語源が朝鮮語だと主張したのは柳田國男の弟

某所にて奈良の語源は朝鮮語という話があったので、ちょっと調べてみた。

「奈良」の語源としては「平らな、平坦な(土地)」を意味する「なら(す)」であるという説が有力である[1]。都城という意味を与えるために「城」という字を加えて「平城」を奈良と呼称した。直言すれば、「則ち精兵を率ゐて、進みて那羅山に登りて軍いくさす。時に官軍屯聚して、草木を〓〓す。因りて其の山を號して、那羅山と曰ふ。〓〓、此を布瀰那羅須ふみならすと云ふ」〈『日本書紀崇神天皇 10 年〉に拠る。朝鮮語で「国」という意味の「나라(発音:ナラ)」を語源とする説もあるが、歴史的根拠に乏しく、「ナラ」の呼称が出る万葉集時代に朝鮮で「나라(発音:ナラ)」と言う言葉が用いられていたことを示す文献等は現在存在しない。

奈良 - Wikipedia


ウィキペディアには否定的見解が書いてある。俺もおそらくそうだと思う。


だが、一体誰がそれを主張したのか?それが気になった。これは取るに足らない俗説なのか?それとも、現在では否定されているが以前は受け入れられていた説なのか?というのも、奈良の語源が朝鮮語だという説は、前からいろんなところで目にしたことがあるから。当時は全く気にしていなかったから確かな記憶があるわけじゃないけれど、出鱈目な説という印象はなかった。


というわけでグーグル先生に訪ねてみたところ、これを最初に唱えたのは松岡静雄だという答が。
奈良 ナラ 松岡静雄 - Google 検索約 37 件



「半月城通信」によると、『日本古語大辞典』(刀江書院1929)

 ナラ(那良・那羅・奈良) 大和の地名旧都として有名である。崇神紀に軍兵屯聚して、草木を踏みならした山を、那良山と号(なづ)けたとあるのは信じるに足らぬ。
  ナラは韓語ナラで、国家という意味であるから、上古此(この)地を占拠したものが負わせた名であろう。此語は用いられたのが、夙(つと)に廃語になったのか。或は大陸系移住民のみが用いて居たのであろう。

と書いてあるそうだ。
半月城通信 No.82


で、この松岡静雄という人は何者かというと、ウィキペディアに、

松岡 静雄(まつおか しずお、1878年5月1日 - 1936年5月23日)は、日本の海軍軍人、言語学者民族学者。最終階級は海軍大佐。

松岡静雄 - Wikipedia
とあり、さらに読むと、兄に柳田國男の名前がある。
※あとで気づいたけれど「半月城通信」にもそう書いてあった。
半月城通信 No.100


そういえば柳田國男の兄弟に民族学者がいるという話は前にも目にしたような記憶があるけれど、あまり関心がなかった。今後もっと調べてみたい。



なお、
萬葉集論究 第一輯、松岡靜雄、章華社、417頁、3圓80錢、1934.2.11發行
にも

若し然りとすれば奈良に冠したのは其轉用で、ナラの原語なる※[ハングルでナラ]《ナラ》が「國」を意味するからではあるまいか。

と書いてある。