受け継がれるもの

はてなブックマークの「最近の人気エントリー」で見つけた記事。
EmpireoftheSun太陽の帝国: 大和シロアリと天皇制の秘密
何で「人気」になっているのだろうか。賞賛されているというのでないのは明らか。その気持ちもわからないではない。で、気になるのはこの部分、

 女王シロアリには「自分の完璧な子孫を残したい!」という生物学的な強い意志が明確にあるのであり

 「これと似ている例は日本の天皇制」

 ということではないだろうか?

 もちろん

 2000年以上も前の時代には遺伝子の存在など到底知られていなかったであろうが・・・

 「前天皇からの”何か?”を純粋に受け継いだ者に後継天皇の資格がある」

 と考えたのは当然であろう。


これは、
折口信夫 大嘗祭の本義(青空文庫)

恐れ多い事であるが、昔は、天子様の御身体は、魂の容れ物である、と考へられて居た。天子様の御身体の事を、すめみまのみことと申し上げて居た。みまは本来、肉体を申し上げる名称で、御身体といふ事である。尊い御子孫の意味であるとされたのは、後の考へ方である。すめは、神聖を表す詞で、すめ神のすめと同様である。すめ神と申す神様は、何も別に、皇室に関係のある神と申す意味ではない。単に、神聖といふ意味である。此非常な敬語が、天子様や皇族の方を専、申し上げる様になつて来たのである。此すめみまの命に、天皇霊が這入つて、そこで、天子様はえらい御方となられるのである。其を奈良朝頃の合理観から考へて、尊い御子孫、という風に解釈して来て居るが、ほんとうは、御身体といふ事である。魂の這入る御身体といふ事である。
此すめみまの命である御身体即、肉体は、生死があるが、此肉体を充す処の魂は、終始一貫して不変である。故に譬ひ、肉体は変つても、此魂が這入ると、全く同一な天子様となるのである。出雲の国造家では、親が死ぬと、喪がなくて、直に其子が立つて、国造となる。肉体の死によつて、国造たる魂は、何の変化も受けないのである。
天子様に於ても、同様である。天皇魂は、唯一つである。此魂を持つて居られる御方の事を、日の神子(ミコ)といふ。そして、此日の神子(ミコ)となるべき御方の事を、日つぎのみこといふ。日つぎの皇子とは、皇太子と限定された方を申し上げる語ではない。天子様御一代には、日つぎのみこ様は、幾人もお在りなされる。そして、皇太子様の事をば、みこのみことと申し上げたのである。

古代日本の考へ方によれば、血統上では、先帝から今上天皇が、皇位を継承した事になるが、信仰上からは、先帝も今上も皆同一で、等しく天照大神の御孫で居られる。御身体は御一代毎に変るが、魂は不変である。すめみまの命といふ詞は、決して、天照大神の末の子孫の方々といふ意味ではなく、御孫といふ事である。天照大神との御関係は、ににぎの尊も、神武天皇も、今上天皇も同一である。

ということで、発想自体はトンデモではないのだけれど、「何か」とは「遺伝子」ではなく「魂」なのであった。