「ローマの休日」

【断層】呉智英 「ローマの休日」はローマの休日か - MSN産経ニュース


俺は教養がないので本当のところはわからない。この手の翻訳の問題で起こりうるだろう論点。


(1) 完全な誤訳なのか、両方の意味をかけているのか?
(2) 英語圏では常識なのか?英語圏でも一部の人しか知らないのか?
(3) 無知による誤訳なのか?わざと(商業的な理由その他)なのか?


呉智英氏は「欧米の教養人ならすぐ分かるしゃれ」と書いているので、(1)は両方の意味がある(2)教養人ならわかる、ということなんだろう。それが正しいかは知らないけれど。



しかし最大の疑問は、

ローマ帝国では、奴隷戦士をライオンと戦わせる見世物があり、ローマ人は休日に娯楽としてこれを観戦した。見ている方には娯楽でも奴隷戦士にとってはいい迷惑である。このことから、「ローマの休日」で他人の迷惑を楽しむ、あるいは、面白いスキャンダル、という意味になった。

として、

ここでは、王女様の楽しみがはた迷惑であり、王女様の恋がスキャンダルとして騒がれそうだ、ということだ。

と述べている部分。


「王女様の楽しみがはた迷惑」というのは、誰にとって「はた迷惑」なのか?これをローマ帝国にあてはめると王女様が見物人であり、「はた迷惑」なのは奴隷戦士に該当する人達ということになるが、それが誰なのかさっぱりわからない。王女様の側近は迷惑かもしれないけれど、そういう映画だったっけ?それに王女様は迷惑を被っている人を見て楽しんでいるわけでもない。


ついでに「王女様の恋がスキャンダルとして騒がれそうだ」というのも、そんな描写は映画になかったと思うし、騒がれそうになりそうな気配すらなかったと思う。新聞記事になりそうだったのはそういうことではないでしょう。


呉智英氏は呉智英氏で勘違いしているのではないか?


(追記)
「王女様の恋がスキャンダルとして騒がれそうだ」というシーンはありましたね。王女と新聞記者の恋ではなくて、王女と美容師の恋だけれど。ただ、この場合はスキャンダルで利益を得るのは新聞記者で、楽しむのは読者。アン王女は奴隷戦士の立場になりますね。一方の「王女様の楽しみがはた迷惑であり」では王女はローマ人。立場が逆転してますね。すると『はた迷惑な王女様』か『王族のスキャンダル』、どっちの邦題を付けても、やはり適切な訳ではないと思われ。