神武東征伝説と「幻の大和国」(その7)

出雲神話」と「出雲国島根県)」は元々は特に関係がなかったのではないかというのが前回までのあらすじ。つまり史実を元にして神話が作られたのではなくて、神話を元にして神話の舞台となった地が決められたのではないかということ。


元になった神話がどんなものだったのかは、史料が存在しないのでわからないが、類似した神話が各地にあったのだろうと想像する。


桃太郎という昔話が日本各地に存在するのと同じようなものだったのではないだろうか。桃太郎の舞台となった場所はどこか?「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました」の「あるところ」とはどこか?


伝説としての「桃太郎」における「あるところ」は、それが伝えられた地域が想定されているだろう。愛知県犬山市桃太郎伝説は有名だが舞台はもちろん犬山だ。香川の桃太郎伝説の舞台は香川。その他の地域も同様だろう。


現在よく言われている岡山がルーツというのは、きわめて怪しげな説(そもそも「桃太郎伝説」じゃないし)だが、「定説」であるかのようになってしまった。


しかし、そうなってしまった経緯と、「記紀神話」の成立の経緯には類似した点があるかもしれない。「記紀神話」も数ある類話の中で、「本物」はこれだと多くの人々が信じることによって、定説化していったのかもしれない。