平安楽土(その1)

俺が「平安楽土」という言葉に興味を持ったのは、井沢元彦の『逆説の日本史』で、安土の地名は「平安楽土」に由来するという説を知ったからだった。


気になったのは「平安楽土」って、確かに聞いたことはあるけれど、どういう言葉なのかがわからないということだった。


漢和辞典には載っていない。図書館に行って、でっかい漢和辞典も調べたけれど載っていない。俺は「平安楽土」という言葉は中国の古典からとったのだろうと、特に根拠もないけれど、そう思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。じゃあ一体なんなのだというのがかねてからの疑問であった。


調べてみると「平安楽土」というのは、延暦14年正月に宮中で行われた宴会で「新京楽 平安楽土 万年春」という「踏歌」が奏されたということらしい。


なおグーグル先生に聞いてみたところでは、
"平安楽土" "万年春" - Google 検索
98件しかヒットしない。「"平安楽土"」だけなら7210件ヒットするけれど、それでも意外に少ない。


出典は何かとなると、もうこれはほとんど記しているものはない。
日本紀略』と書いているのが一件。
「志貴皇子」


あと、『角川日本地名大辞典』では『類聚国史』を典拠にしている。


※ここに原文があった。
▲史料06 『日本後紀』逸文 延暦十四年正月乙酉(16日)条
(『類聚国史』七二踏歌・『日本紀略』)](五島邦治のホームページ)
日本後紀』の逸文が『類聚国史』や『日本紀略』に載っているということだろうか。


「平安楽土」の出典は踏歌の歌詞(合いの手?)であった。


ちなみに、「平安」と「楽土」の意味は、

1 やすらかで変わったことのないこと。無事平穏なこと。また、そのさま。「心の―を保つ」「―な日々を送る」

へいあん【平安】の意味 - 国語辞書 - goo辞書

心配や苦労がなく楽しい生活ができる土地。楽園。「王道―」

らくど【楽土】の意味 - 国語辞書 - goo辞書


(つづく)