女国と女王国

現在までに図書館で10冊ほど邪馬台国関連の本を借りてきた。「女王国」に関して論じられているものは何冊かある。しかし、ざっと見た限りでは女王国は邪馬台国のことだとか、倭国連合のことだとかいったものであり、なぜ「女王国」と記されているのかとか「女国」との関係ということについて言及してあるのは、最初に読んだ『改訂新版 卑弥呼誕生』(遠山美都男 講談社現代新書 2011)のみであった。


どうもこの問題に対する研究者の関心は低いようだ。研究者が「女王国」という名前についてどう考えているのか、言及されているのが遠山氏だけなので他はさっぱりわからない。だから推測になるけれど「女王が統治しているから女王国であってそれ以上でも以下でもない」という単純なものなのではなかろうか?


しかし、魏志倭人伝には裸国とか侏儒国とか黒歯国とかいった怪しげな国の名が記されているのであり、女王国もその同類ではないかという推理は十分成り立つのではないか?この問題を軽視するわけにはどう考えたっていかない。


倭国は女王が統治しているから「女王国」なのではなくて、まず「女王国」ありきではないのか?「女王国」は伝説上の国(あるいはモデルがあったが伝説化した国)であって所在が不明だった。一方、東方の倭国では女王(遠山氏によれば女王ではなく男王の傍にいた特別な女性だが)がいたので、これこそが伝説の「女王国」だと見做された。そういう経緯があるのではないか?


もし、そうだとしたら考えるべきことは山ほどあるのだ。しかるにこの問題を論じている研究者は邪馬台国研究が盛んな割には極めて少数しかいないのではないか?「文献史学での論点は出尽くした」みたいな話を見かけたけれどとんでもない。論じられてない、あるいは重要視されていないけれど本当は重要な論点はいくらでもあるのではないか?