「ごん狐」の解釈(その2)

その1 ごんは何をしたのか?
兵十にいたずらをした。兵十の取った魚が逃げた。結果として魚の命を救った。
ただし、うなぎは首にまきついたので頭をかみくだいて外した。つまり殺した。


その2 兵十の母親の死
ごんのいたずらが原因で死んだという描写はない(よくある勘違い)。ごんのいたずらのせいでうなぎが食べられなかったということ。

「兵十のおっ母は、床(とこ)についていて、うなぎが食べたいと言ったにちがいない。それで兵十がはりきり網をもち出したんだ。ところが、わしがいたずらをして、うなぎをとって来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせることができなかった。そのままおっ母は、死んじゃったにちがいない。ああ、うなぎが食べたい、うなぎが食べたいとおもいながら、死んだんだろう。ちょッ、あんないたずらをしなけりゃよかった。」

新美南吉 ごん狐


(多くの人の脳内で「うなぎ→滋養強壮→食べたら病気が治る」という連想が働いているのだろうがそういう話ではない。死ぬ前に食べさせてあげたかったという話)


ただし、それもごんの想像に過ぎない。本当に兵十が母親のためにうなぎを取ったとする描写はない。母親が病気だったという描写すらない。突然死の可能性もある。


その3 兵十はごんについてどう認識していたのか?
いたずら狐(害獣)だと認識していた。だが親の仇だと思っていたという描写はない。


その4 兵十は全てを理解したのか?

「おれは、あれからずっと考えていたが、どうも、そりゃ、人間じゃない、神さまだ、神さまが、お前がたった一人になったのをあわれに思わっしゃって、いろんなものをめぐんで下さるんだよ」
「そうかなあ」

兵十の家に栗や松茸を置いていたのが神様ではなくてごんだということは理解した。しかし何のためにそんなことをしたのかまで理解しただろうか?ごんは自身のいたずらと兵十の母の死とを関連付けている。だが兵十が関連付けている描写はない。一人になった兵十を哀れんで届けたのだと思うかもしれない。しかし相手はケモノであるからして、もっとも可能性が高いのは、ごんに高尚な理由があってしたということではなくて、単なる遊び心(いたずら)としてやったのだろうと受け取ることではなかろうか。