天皇の政治利用

山本太郎議員の行動、識者の見方は 園遊会で陛下に手紙:朝日新聞デジタル

そもそも「天皇の政治利用」とは何かに混乱がみられるように思う。

 「田中正造における憲法天皇」の論文がある熊本大の小松裕教授(日本近代思想史)は、(1)田中は直前に辞職し個人で直訴したが、山本氏は議員の立場を利用した(2)明治天皇には政治権力があったが、今の天皇は象徴で何かできる立場ではない、という点で「同一視できない」とみる。

(2)だけれど、天皇の政治権力の有無を取り上げるのはなぜなのだろうか?天皇に直訴して、天皇がそれを受け入れて、政治権力を行使するという話ならわかる。そんなことは現在では法的には認められない。ただし天皇が政治的な発言をすれば、それが議員個人の心理や世論に影響を与える可能性は少なくない。故に天皇は政治的な発言を控えられている(ただし法的に規制されているわけではないと思う。詳しくないけど)。


ところで田中正造の直訴はウィキペディアによると

12月10日、東京市日比谷において、帝国議会開院式から帰る途中の明治天皇足尾鉱毒事件について直訴を行う。途中で警備の警官に取り押さえられて直訴そのものには失敗したが、東京市中は大騒ぎになり、号外も配られ、直訴状の内容は広く知れ渡った。

とある。直訴の意図が何だったかはともかく、結果としては「直訴状の内容は広く知れ渡った」という効果があったということになる。すなわち田中正造の時代には天皇は政治権力を有していたけれど、その政治権力を田中が利用することに成功したという話ではない。


すなわちこれを「政治利用」と呼ぶことが可能ならば、今回の件も「政治利用」に他ならない(「結果的にそうなった」であっても、そうなることは予想可能なので言い訳にはならない)。