「江戸しぐさ」と古き良き日本

【読書感想】江戸しぐさの正体 - 琥珀色の戯言


かつての江戸には素晴らしいマナーがあったという。しかしこの「江戸しぐさ」を賛美する人の主張は、よくよく見てみれば、


その素晴らしき「江戸しぐさ」の伝統を破壊したのは官軍。


ということになるそうだ。


維新後の日本を肯定するいわゆる日本の「右」に属する人達はなぜ官軍を貶めるこんな話を支持するのだろうか?都合が悪くても官軍も悪事を行ったという事実を隠蔽してはいけないという使命感だろうか(んなアホな)。


なおタイトルに「古き良き日本」と書いたが、実際は「古き良き江戸」である。今の東京は日本人の約10人に1人、東京圏だと約3人に1人という一極集中だけれど、江戸時代の江戸は大都市とはいえ幕末の推定人口が約3100万人で江戸の人口が諸説あれど100万人とよくいわれ、それほど集中していない。官軍の主力である薩長土肥などは辺境であるからしてマナーが発達してなかったかもしれないけれども、京・大阪・名古屋・博多などの都市においては「江戸しぐさ」に類する誇るべきマナーは存在しなかったのだろうか?それらの都市では「大虐殺」など無かったのだから伝承されていてよいはずなのに、わざわざ「江戸しぐさ」を発掘しなければならないということは、おそらく無かったということなのだろう。ということは江戸時代の日本では一部の地域の一部の人達だけが素晴らしいマナーを身につけていたけれど、他の大部分はそうではなかったということになるだろう。


(なお大店であれば江戸以外の都市に支店を構えるケースもあり、人的交流があったはずなのに、なぜ地方に残っていないのかは謎。官軍の秘密暗殺部隊によって消されてしまったのだろうか?)