「江戸しぐさ」はなぜ広がったか?

「江戸しぐさ」はやめましょう。:何が問題か。なぜ広がったか。(碓井真史) - 個人 - Yahoo!ニュース


だが、そもそも「江戸しぐさ」は広がっているのだろうか?


ちなみに俺が「江戸しぐさ」を知ったのは「江戸しぐさ批判」を知った時だ。日本国民全体における「江戸しぐさ」の知名度はどの程度なのだろうか?おそらく大したことはないだろう。


ただし、一部においては知名度はそれなりに高いものと思われる。それは後で書くことにして、まず上の記事から

原田実先生の本によれば、江戸しぐさが最初に世に出たのは、1981年読売新聞の「編集手帳」だそうです。これをきっかけに、徐々に広がっていったようです。歴史学者が取り上げたわけではありませんが、ちょっと良い話として広まっていきます。新聞に載ったのですから、信頼できる話とみんなが思ったことでしょう。

歴史的検証がされることもなく、とても奇妙な物語が語られていることが確かめられることもなく、広まっていきました。

とある。だが既に書いたように俺は「江戸しぐさ」は「江戸しぐさ批判」によって知った。いや本当は「知っていた」のかもしれない。すなわちテレビやネットで目にしていたのかもしれない。ウィキペディア

文献で確認できる限りで「江戸しぐさ」という語の初出は、1981年の読売新聞の「編集手帳」で紹介されたものであり[7]、2004年[8]、また翌2005年にも公共広告機構(現・ACジャパン)で江戸しぐさが取り上げられた[9][10]。

江戸しぐさ - Wikipedia
とある。


俺は新聞(読売にかぎらず)を購読していないので「編集手帳」で知ることはない。そもそも新聞購読したとしても「編集手帳」とか読まないし。しかし公共広告機構のCMなら見ていた可能性は高い。でも全然記憶にないのだ。まあCMタイムはトイレタイム的なものだというのもあるだろうが、俺は日本史に興味があるので記憶に残るんじゃないかとも思うが覚えてない。


で動画を見てみたんだが、「江戸しぐさ」という文字で始まり「江戸ではマナーは粋でした、急いでいて道を譲ってもらったら、すっと感謝のまなざしを、いやあいいもんだねえ」というナレーション。


「ふーん」てなもんでこんなん印象に残らない。公共の場でマナーを守ろうねってCMだと思うだけで、江戸時代にそんなマナーが本当にあったか確かめてみようなんて気は全く起こらない


また冒頭に「江戸しぐさ」という文字がコンマ数秒出るけれども、そんなのCM終った頃には既に忘れてしまうだろう。そもそも「江戸しぐさ」という言葉が歴史用語として使われていることに気付かない。単に江戸時代のマナーのことをACが「江戸しぐさ」と名づけただけって感じに受け止めただろう。


特に話題になったわけでもなく、こんなもの覚えてなくて当然だ


しかし、このCMを見て強い印象を持った人もいたに違いない。


それはどういう人かといえば、既に「江戸しぐさ」を知っている人だ。どこかで江戸時代に「江戸しぐさ」と呼ばれるマナーがあったという話を聞いていた人がいて、でも「江戸しぐさ」なんて聞いたことのない話だから話半分で聞いてたら、テレビのCMでもやっていた。そういう場合は印象に残ることもあるだろう。


で、そのような「どこかで江戸しぐさの話を聞いたことのある人」というのはどこで聞いたのかといえば、おそらくは講演会や勉強会などで聞いたのだろうと推測できる。


その講演会や勉強会を聞く人というのはどのような人なのかといえば、例えば中小企業経営者のセミナーだとか、中央や地方の政治家の勉強会、そして教育関係者の勉強会だとかが多いのではなかろうか。


だとしたら、日本国民全体ではそう知名度が高くなくても、彼らの間では知名度がそれなりに高い。そしてテレビや新聞でそんなに大きくは取り上げられていなくて、CMや小さな記事であって、大多数は気にも止めないようなものであっても、既に「江戸しぐさ」を知っている彼らにとっては「江戸しぐさ」の真実性を高める作用を及ぼす。


そして政治家や企業経営者は地元の名士として地方の教育行政に影響力を及ぼし、校長や教頭や教師は現場教育で「江戸しぐさ」を使用した道徳教育を行う。


そういうからくりになっているのではないかと俺は思うのである。