俺が高校生のとき、授業が午前で終って家でテレビを見てたら、いや正確には見てたというよりつけてたというべきで、漫画読んでたとか他のことをしながらだったと思うんだけれど、突然テレビの中のおっさんが大声で怒鳴りはじめた。そんで、何だと思ってテレビ見るのに集中したんだけれど途中からだから何で怒ってるのかさっぱりわからない。しかし何か凄いことになってるなとワクワクテカテカしてたらCMになって、CM明けたらそのおっさんは消えていた。このことは翌日学校でも話題になった。
※ 俺はこのおっさんが何と怒鳴っていたかについてずっと「田中角栄を死刑にしろ」と怒鳴ってたのだと思い込んでいたんだけれど、本当は「田中を起訴した検察官は全員死刑だ!」だった。
⇒テレビ生放送での発言事件(小室直樹 - Wikipedia)
そんで俺はこの名前も知らなかったおっさんをしばらく「アブナイおっさん」だと思ってたんだけれど、後で小室直樹という名前だと知り、雑誌とかみてるとこのおっさんを支持してる人が結構いるらしいということを知った。だけどどんなことを主張しているのかは相変わらず知らないし、立派なことも言ってるかもしれないけれど「へんなおっさん」であることには違いないだろうと思ってた。実は今もまだ小室直樹の著作を一冊も読んだことがないので、どういう主張をしている人なのかよく知らない。
で、なんでこんなことを突然書いたのかというと、小室直樹についてはもう一つ強烈に印象に残っていることがあって、最初に書いたテレビでの事件からどれくらい後のことだったかは記憶に定かではないんだけれど、またこのおっさんがテレビに出ていて、そんでまた怒鳴り出したのであった。
その時はたしか昭和天皇について会談していて、その中で誰かが「昭和天皇の人格は立派だった」みたいなことを言ったんだと思うんだけれど、そしたらこのおっさんがそれに噛み付いて「じゃああんたは天皇の人格が劣っていたら天皇を認めないのか?」みたいなことを怒鳴りちらしていたと記憶している。正確には何と言ってたかは定かではないけれどそういう話だったと思う。
これにはなるほどと感心した。中国では徳のある人物が皇帝になる(とされている)。しかし日本の天皇の条件は徳のあるなしではなくアマテラスの子孫であることであり、正統であることが求められるのである。悪王であっても正統なら天皇の条件は満たされているのである。天皇は善悪を超越した存在であって日本の神々と同様なのだ。
この考えが現在でも通用するかはともかく過去において天皇はそういう存在だった。だから天皇の人格が優れているかは特に重要なことではない(ただしこれは原理的にはそうだということであって皇族であることが条件だが徳のあるものが天皇になるべきだという考えはあったとは思うけれど)。
で、「八紘一宇」だけれど、神武天皇が人民を思いやる立派な人物で云々なんて話が出てくるのは、この原理を理解してないからであろう。神武が天下の王たらんとして天皇に即位するのは、神武が皇孫だからであり、それで条件を十分に満たしているのである。それが天神の命じたところだからである。天神の命を実現して王となるために人民を慰撫するのであって、人民のために王となるのではない。
この考えはデモクラシーの時代にあっては違和感を持たれるものではあるだろうけれど、だからといって、都合の良い解釈をしてよいものではなかったのである。