日本のサービス産業の生産性が低いは印象操作ではないのか?

近頃ネット上で日本の労働生産性が低いという話が盛り上がっているんだけれど気になること。


たとえば

従業員が一定の労働時間にどのくらいのモノやサービスを生み出すかを示す「労働生産性」の調査で、日本は小売り業や飲食業などで業務の効率化が進んでいないことなどから、主要7か国の中で最下位だという調査結果がまとまりました。

労働生産性 日本は主要7か国の中で最下位 | NHKニュース


「主要7か国の中で日本の労働生産性は最下位」→「日本の生産性の内訳を見るとサービス産業の生産性が低い」


そこから「日本のサービス産業の生産性が低いから日本の労働生産性が低い」という印象が受け取れるように思うんだけれど、それって論理的におかしくないですか?


たとえば、こんな話だったらどうだろう?

主要7か国で10才代から80才代までの人を年代ごとに同人数選んで数学のテストをしたところ日本人の成績が最下位でした。内訳を見てみたところ10才代のうち小学生が微分積分の問題を解けないことがテストの平均点を下げていることがわかりました。

これで小学生児童に日本人が最下位だった責任を押し付けるのはおかしいでしょう。なぜなら他の国の小学生児童も微分積分の問題は解けないだろうから。


何がいいたいのかわかりますよね。これと同じで外国でもサービス産業の生産性が低いのだったら、全体の生産性が低い原因をそこに求めることはできない。他の国のサービス産業の生産性との比較が必要ですよね。


で、調べてみましたよ。
サービス産業の生産性 平成26年4月18日 内閣府 (PDF)


この資料の国際比較では、全産業の労働生産性比較では、アメリカ・フランス・ドイツ・スウェーデン・カナダ・英国・日本・韓国の順。サービス産業はアメリカ・フランス次いで日本・ドイツ・スウェーデンがほぼ同じで英国がぶっちぎりで最下位(こちらは韓国はなし)ということになっております。


すなわち、アメリカ・フランスとの比較では全体の生産性の低さの原因の一つにサービス産業の生産性の低さを取り上げることができるかもしれないけれども、ドイツ・スウェーデンとの差はそれでは説明できないということになりますね。


(ただし2010年までの比較であり、サービス産業の生産性上昇率において日本がぶっちぎりの最下位。しかし逆に1980年代後半から90年代半ばまでは日本の成長率がぶっちぎりに高い)


(追記) あと重要なこと書き忘れてたけど全産業の生産性のグラフと比較してサービス産業の生産性は各国とも低いように見える。むしろ日本(とフランス)は全産業とサービス産業の差が少ないように見える。特に米国はサービス産業の国際比較で見れば日本よりも圧倒的に生産性が高いが、米国国内で見れば全産業と比較してサービス産業の生産性の低さは相当のものであろう。結局何と何を比較するかによって印象が大きく変わってくる


つまり日本のサービス産業の労働生産性が国際比較で下降しているのは事実。ただしこれは1990年代後半以降の傾向であり、よく言われる日本の過剰サービスはそれ以前から言われていた話であり、90年代後半以降に生産性上昇率が下降した理由がそれなのかは甚だ疑問。


それにしても意外なのはスウェーデン。物価の高いことでも有名だが、スウェーデンのサービス産業の労働生産性がそれほど高くないことに驚いた。ちなみにOECD加盟諸国の労働生産性(2012年/34カ国比較)でスウェーデンは10位で日本は21位。この差はサービス産業の生産性の差ではなくて他の産業の生産性の差ということなのだろう。
労働生産性の国際比較(PDF)