謎のシステム増強報道

引き続き「木走日記」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060120/1137740301
に紹介されている記事から。


東証問題】「約定能力を700万件以上に引き上げたい」、西室社長兼会長が表明
日経コンピュータ電子版 2006年01月19日
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20060120/1137740301

 東京証券取引所西室泰三社長兼会長は1月19日、株式売買システムの約定処理能力について「1日当たり700万件以上に引き上げたい」との意向を表明した。現在のシステムでは、1日当たり450万件が限界。1月30日のシステム刷新で約定処理能力を500万件まで拡大するが、さらなるシステム拡張をしたいとの考えを示した。

 東証は1月18日、ライブドア強制捜査開始による影響で約定件数がシステムの限界に迫り、午後2時40分に東証1部・2部・マザーズ市場の全銘柄の取引を強制的に停止した(関連記事1、関連記事2)。当日の会見で、東証は「年内にも1日の注文処理能力を現在の900万件から1500万件まで拡大させる」(深山浩永執行役員)と説明している。

 西室社長兼会長の発言どおり、東証が約定処理能力を拡大すれば、1日当たりの約定処理件数は450万件から700万件強に、注文処理件数は900万件から1500万件に増えることになる。

について。

要点を整理しよう。
東証社長は19日、「1日当たり700万件以上に引き上げたい」との意向を表明した。
18日「当日」の会見で、「年内にも1日の注文処理能力を現在の900万件から1500万件まで拡大させる」(深山浩永執行役員)と説明している。
③社長発言が実現すれば、1日当たりの約定処理件数は450万件から700万件強に、注文処理件数は900万件から1500万件に増えることになる。


①であるが、発言が19日のことであることはわかるが、どこで誰に話したのかは書いてない。
次に②であるが、18日の会見は、要旨が東証のサイトにあるが、
http://www.tse.or.jp/guide/interview/index.html
そこに該当の発言が見あたらない。それどころか、一回目の会見で深山氏は、

具体的にいつ、どういう内容でということは現時点ではまだ申し上げられませんが。

と述べている。これはどういうことであろうか?オフレコ発言?


なお同様の記事は毎日新聞にもある。
東証 処理能力「700万〜800万件へ増強」の方針
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060120-00000003-maip-bus_all
こちらでは、「700万〜800万件へと増強」とかぎ括弧付きで書いてある。
一方、注文処理能力については「年内に1400万件程度まで引き上げる。」とあり、なぜか日経コンピュータの「1500万件」と数字が異なるし、こちらはソースが書いてない。700万の2倍ということだろうか?


ちなみにこれを考える上で重要な情報。
1月13日」、つまりライブドアショックが想定外であった時点での日経記事。
東証、株式売買の処理能力7割増強・6月メド1500万件
http://markets.nikkei.co.jp/special/sp019.cfm?id=d2y1200612&date=20060112

 東京証券取引所は株式相場の活況に対応し、売買システムの能力を大幅に増強する。6月をめどに1日当たりの処理件数を現在の900万件から1500万件へと約7割増やす。システムの負荷が重く、不透明との批判も多い株式注文の訂正・取り消しについての監視も強める。2008年3月までに400億円超を投じて処理能力がさらに高い次世代システムを構築し、安定した取引インフラづくりを進める。


それに対して。同日東証は、
売買システムの処理能力増強に関する一部報道について
http://www.tse.or.jp/news/200601/060113_a.html

本日、当取引所が、株式売買システムの処理能力について6月を目途に一日当たり注文受付件数を1,500万件に増強する旨の報道がございましたが、当取引所では、当該内容について何ら決定・公表しておりません。
当該報道では、今後の能力増強の実施時期、投資規模、現システムの処理能力の上限、システム負荷軽減の観点からの市場監視強化について触れられていますが、これらは誤認を招きかねない内容を多く含むものであります。

と否定している(逆に言えば19日の記事は否定していない)。不可解な点が多い。


(追記)
時事通信の記事。
システム能力、1.6倍程度に=年内に実施−西室東証社長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060119-00000065-jij-biz

 東京証券取引所西室泰三社長は19日午前、売買急増に伴って全銘柄の取引停止を余儀なくされた事態を受け、システムの処理能力を年内に現在の1.6倍程度に増強する方針を明らかにした。自民党本部で開かれた金融関連の合同部会に出席後、記者団に答えた。
 東証は、1日に処理できる売買成立件数を1月末までに現在の450万件から500万件に増強する方針を既に打ち出している。さらに西室社長は、2006年中に処理能力を700万−800万件とする意向を表明。注文を処理する能力も現在の900万件から1400万件程度まで増強する方針も示した。 
時事通信) - 1月19日13時1分更新

 これによると、

自民党本部で開かれた金融関連の合同部会に出席後、記者団に答えた。

とある。数字が記事によって微妙に違うのは、記者との応答での元情報を、記者が独自に計算したからであろうか?それと13日の日経の記事が「6月を目途」の部分は不明だが、数字が正確であることから考えると、この計画は今回のトラブル以前から計画されていたということであろうか?