ピラミッド公共事業説

POLAR BEAR BLOG: いっそのこと、日本はピラミッド建設に乗り出したらどうか。


ピラミッド公共事業説については去年ちょっと書きました。
国家鮟鱇 - ピラミッドは公共事業だった?


「ピラミッド公共事業説」と言われているものを発表したのはクルト・メンデルスゾーンという人。彼は何と言っているのか?『ピラミッドの謎』(酒井傳六訳 文化放送開発センター出版)からの引用。

イムホテプは、メンフィスに臨む砂漠の縁に生ける神ホルス・ネテルケト・ジョセルのために豪壮な建造物を築造することをはじめた。彼の第一目的が建築の偉大さにあったのか、あるいは氾濫期に悶着をおこす村人を雇うことにあったのか、われわれは永遠に知ることはないであろう。

一般に「公共事業説」として説明されていることを、主張した張本人は、「第一目的」であったのかわからないと言っているんですね。続けてこう述べる。

しかし一つのことは確かである。すなわち、大規模組織の問題が彼の頭の中で第一のものであったにちがいない。彼はその組織を前例のない程度まで使った。さらにまた、明らかに彼は効果的で複雑な民政の創始者であった。この民政は彼のすべての行動の基礎でなければならなかった。その時いらい、エジプトの中央行政は着実に膨張した。ついで中央行政はピラミッド建造と密接に結びつかなければならなかった。なぜならピラミッド建造は国の第一の中央集権的活動となったからだ。

つまり、エジプトの民は、かつて小規模の集落で自給自足的な生活を送っていた。ナイル川の氾濫期には、することがないので近隣の村を襲うこともしばしばあった(同胞意識が希薄であった)。それが、多数の労働力と長い期間を要するピラミッドの建設によって、国家に生活を依存して労働に従事する人々を生み出した。それにより人心が変化し、それがエジプトの中央集権的な国家(民族国家)の創設に役立ったということですね。なぜ建造物がピラミッドのように実益的なものでないのかというと、潅漑施設などを作って利益を得るのは、せいぜい数村であり、地域統合という目的には適わなかったということですね。