ナチスの「脱経済的政策」

ナチスの「25カ条綱領」は日本人必読では - Zopeジャンキー日記
ぼくのかんがえたナチス - シートン俗物記

 全体主義は資本主義か社会主義かという問いは、問い自体が間違っている。もちろんいずれでもない。ファシズムは、資本主義と社会主義のいずれをも無効と断定し、それら二つの主義を超えて、経済的要因に依らない社会の実現を追及する。唯一関心のある経済問題は、生産機構を円滑に機能させることである。生産が誰の費用によって、誰の利益のために行われるかは二の次である。経済的な成果などは、社会的な課題の遂行に伴う副産物にすぎない。
『イノベーターの条件』(P・F・ドラッカー 上田惇生翻訳 ダイアモンド社)

 ヒトラームッソリーニも、他のあらゆる革命家と同じように、自らの革命の本質を理解せず、批判に対しても反論以上のことをするつもりがなかったに違いない。しかし二人とも、まさに社会的な必要に迫られて、生産のための機能を維持しつつ、非経済的な秩序と満足を中心に据える脱経済社会を創造しなければならなくなった。
(同上)


25か条綱領における経済政策は、実のところ「脱経済政策」である。経済的な不平等の代わりに、非経済的な分野において、農民や工場労働者に満足を与えようとするものである。


すなわち、ここで取り上げられている、

不労所得の撤廃、寄生地主の打倒。
・我々は、大企業の利益の分配を要求する。
・我々は、老齢保障制度の大幅な強化を要求する。
・我々は、健全な中産階級の育成とその維持、および大規模小売店の即時公有化、小規模経営者に対するその安価な賃貸、全小規模経営者に対して最大限考慮した国家・州または市町村に対する納品を要求する。
・我々は、我が国民の要求に適した土地改革、公益目的のための土地の無償収用を定める法の制定、地代徴収の禁止と土地投機の制限を要求する。
・我々は、公共の利益を害する活動に対する容赦ない闘争を要求する。高利貸し、闇商人等の民族に対する犯罪者は、宗派や人種にかかわらず全て容赦なく処罰される。
・我々の要求をすべて実行するために:国家の強力な中央権力の確立。中央議会の国家全体および組織一般に対する絶対的な権威。公布された国家の大綱的法規を連邦各州において実施するための階級・職業別の団体の形成。

などは、全てその要求に応じるためのものである。これらは経済的平等のための再分配政策というよりも、農民や工場労働者、小規模経営者に精神的満足を与えるための「脱経済的政策」なのである。


と俺は思いますね。


(追記)
ファシズムについては外山恒一氏の解説が一番しっくりきますね。外山氏は自称ファシストだけれど、それはそれとして参考になるものは参考にしといたほうがいいと思いますね。
ファシズム入門 第一章


それから、「国家社会主義」は社会格差を引っくり返そうとするものではないみたいな主張が支持を集めているみたいだけれど、ナチスは経済的格差を非経済的な分野でもって相殺しようとしていると思われ、上にあるような政策も要は経済的強者を軽視し、経済的下層階級を重視しているというメッセージが重要なんでしょう。そして、さらに突き進んで資本家も労働者も組織のための奴隷とすることによって平等を達成するという方向に進んでいったのでしょう。