森の熊さんを救え

親子グマ射殺に抗議相次ぐ 困惑する福島県西会津町
という記事が反響を呼んでいる。

 全国でクマの出没が相次ぐ中、親子グマ2頭を射殺した福島県西会津町に「かわいそう」と抗議する電話やメールが相次いでいることが28日、町への取材で分かった。町はクマよけ装置設置など対策を進めているが、入り込むのを防ぎきれない。住民の安全確保と野生動物保護の間で山あいの町は困惑するばかりだ。

 西会津町では18日夕、住宅の庭にある柿の木で親子グマ3頭が見つかった。人の出入りが少ない夜間という事情も考慮し、町は山へ逃がすことを最優先。柿を食べ、19日未明に木から下りた3頭を誘導して山林に追い返した。町には「良かった」と対応を評価する声が寄せられた。

 23日朝には住宅近くの空き地で、18日とは別とみられる親子グマが柿の木にいるのを住民が発見。町は住民の安全を優先し、地元猟友会会員が2頭を射殺した。町には23日から抗議が相次いでいる。件数は明らかにしていない。


クマが殺されて、噴きあがる人々 - 書籍出版 双風舎

言いたいことはわかる。わかるんだけれど。


そもそも「抗議が相次いでいる」の抗議件数がわからないんですよね。日本には1億2千万もの人がいる。クマ出没のニュースは連日のように報道されてるから、そりゃ中には抗議しようって人がいても全然おかしなことじゃない。抗議マニアなんてのもいるかもしれないし。それに考えようによっちゃ「良かった」という声だって、「良かった」と思った日本国民全員が役場にメッセージを送ったわけじゃなし、こっちはこっちで「奇特な人」だという評価もできる。


こんなことは、この手のことが起きたら必ずといって良いほど起きることだ。


それに「抗議する電話やメールが相次いでいる」と言うけれど、中には単純素朴な「クマさんが可愛そうだ」というのもあるだろうが、内容を読めば、それにも一理あると思わせるようなものまで、そこにカテゴライズされているかもしれない。もしかしたら、あくまで可能性だけれど、他の地域の猟友会の人が、「うちではこういうケースでは射殺しない」なんていったのまで「抗議」ということにされているかもしれない。中身はこれだけではとてもわからないのだ。


クマ射殺の正当性を主張するのに、少人数しかいない敵を見つけてきて叩く必要はないと俺は思う。しかし、こういう手法は自らの立場を正当化するために、高頻度で使用される。はっきり言って好ましいことだとは思わないし、危険な手法だとさえ思う。クマ射殺に理解を示している人でも、こういう言説に安易に乗っからず、警戒心を持つべきでしょう。


双風舎の場合、どさくさにまぎれて「子猫殺し」の抗議まで同類にしちゃっている。しかも「その生き物を殺した人間を殺してしまえ」なんて一部の極論を取り上げて悪印象を増幅させようとしているのは悪質だと思う。


「クマがかわいそうだから殺さないで」と感じる皆さんへ - 紺色のひと
「クマを殺さないで!」批判殺到 猟友会「現実分かっているか」と反発 (1/2) : J-CASTニュース


こっちは北海道斜里町のケースで「電話とメール合計100件近く」とありますね。こういうのってネットの炎上と同じで、100件もコメントがあったら、受けた方は凄いたくさんの反応があったと思うかもしれないけれど、不特定多数の中の100件であって、話題になればそれぐらいの反応があるのは、むしろ自然なことだと思うんですね。犯罪予告とか、嫌がらせなどの悪質なものは駄目だけれど、善意でやっているものについてはどうしようもないんじゃないですかね。


問題提起するなら、個人的には「クマに被害を受けている方のことを考え」ることよりも、小さな役場に大量に電話やメールが来たらどうなるのかということについて想像力をはたらかせることの必要性を説くべきなんじゃないかと思いますけどね。