迹見首赤檮 (その5)

迹見首赤檮(その4)の続き。


物部守屋を射落としたとされる迹見首赤檮(とみのおびといちい)の伝説は「太陽を射る話」に源流がある。


ところで、「太陽を射る話」の類話に「朝日長者伝説」がある。


「朝日長者伝説」とは、

たとえば鳥取県気高郡の湖山長者の伝説はこう語っている。昔、ここに産見(うぶみ)の長者というのがいて、ある年の田植を一日で終えようとして、国中のものを集めたが、日没までに終らなかった。そこで長者は金の扇で日を招き返した。翌朝その田はことごとく陥没して湖となり、財貨もまた消失したという。
『日本民俗文化大系2 太陽と月』(小学館

というような話。「日招き伝説」ともいう。


以前書いた、この記事の「浅井長治」という人物の話も「朝日長者伝説」。
浅井三姉妹(アナザーストーリー)

 長治の驕りはそれだけではすまない。稲の収穫が大詰めを迎えた夕暮れどき。「陽が沈めば仕事にならん。引き戻せ、太陽を天空に」と無理難題。「それは無理です」と家来が言えば、「それなら使用人は寝ずに働け」と命令した。

九重高原の朝日長者


「朝日長者伝説」のほとんどが長者が没落する話である。ゆえに「長者没落伝説」ともいう。


「太陽を射る話」にしろ「日招き伝説」にしろ、元は中国にあったものだと考えられている。『准南子』に虞公が剣をもって日を指したところ、日は還って落ちなかった話があるという。中国の伝説では没落する話はないという。だが太陽を射た羿は後に殺されている。


(つづく)