迹見首赤檮 (その7)

迹見首赤檮(その6)の続き。

物部守屋を射落としたとされる迹見首赤檮(とみのおびといちい)の伝説は「太陽を射る話」に源流があり、「太陽を射る話」は「日招き伝説」と類似した話である。「日招き伝説」の長者は没落する。話の中に没落したと明言されてなくても、その人物が実際に没落したのであれば、やはり没落した話である。


平家物語』の那須与一が赤地に日の丸の扇を見事に射落としたという話は「太陽を射る話」であると考えられる。「日招き伝説」では長者は没落する。では、「太陽を射る話」である那須与一の話はどうであろうか?


那須与一やその一族が没落したという話は聞いたことがない。那須与一が実在するのかについても疑問視する人もいる。
那須与一 - Wikipedia


だが、那須与一に扇を射るように命じたのは源義経だ。源義経が没落し滅ぼされたのは誰もが知ることだ。


そもそも『平家物語』は「盛者必衰の理」をメインテーマとしている。平氏政権を打ち倒した義経もまた、この道理に従わなければならない。


平家物語』の作者は、そのことを念頭に置いて、源義経のその後の運命を「予言」していると考えてまず間違いない(もちろん義経が没落したことはその時点で既に現実のことになっていただろうが)。そしておそらく源氏政権が三代で断絶することも「予言」しているのだろう。


ということは疑う余地も無いことだと思うけれど、そういう指摘をしている人を俺は見たことがない。


(つづく)