貧困にまつわる奇妙すぎる論議

あの件で貧困叩きを批判している人というのは

「贅沢できる金があるんだったら、その金を進学費用にすればいいじゃないか」

という批判に

「貧困だという事実は事実だ。相対的貧困絶対的貧困のことではないのだから贅沢する金くらいはある。貧困だと贅沢してはいけないのか」

と反論しているわけだ。それは理解できる。


しかし、そもそも相対的貧困の世帯は贅沢する金がないのだ(資産が無い場合)。


だから俺には貧困叩きを批判している人の論理がこのように見える

相対的貧困だって努力すれば贅沢できるんだ。贅沢したければ食費その他を削ればいいじゃないか(相対的貧困だから贅沢ができないは甘え)」

と。


貧困叩きを批判している人の多くはサヨクと呼ばれる人たちであろう。ところがその人たちの論理は俺にはいわゆる彼らがネトウヨと呼ぶ人たちの論理と同じにみえる。


そもそもあの女子高生は相対的貧困の定義を理解しているのか怪しい(何しろネット上の議論を見ていれば理解してない人が実に多いのだから)。自分の家の所得がいくらなのかも把握していないかもしれない。彼女の言う「貧困」は数値に基づいたものではないのではないか?


彼女の家が相対的貧困に該当するのかNHKはちゃんと確認したのだろうか?今のところそういった情報は無い。


ネットで出回っているNHKからの回答には

本人や家族のほか、行政機関などの幅広い取材を行い、経済的に厳しい環境で生活する高校生だと判断しています。

とある。これが本物なのかはわからないが(おそらくは本物だろう)、彼女は進学するお金がないのが事実だとすれば「経済的に厳しい環境で生活する高校生」なのは間違いないだろう。


しかし、NHKはニュースで

6人に1人、厚生労働省がまとめた所得が、ある一定の水準に満たない貧困状態にある子どもの割合です。中でも母子家庭などひとり親世帯の半数以上は貧困状態で、大学や専門学校などへの進学率は全世帯の割合に比べて、およそ30ポイントも低くなっています。こうした実情を多くの人に知ってもらおうと、経済的な理由で進路の選択に悩む高校生などが、今日自らの言葉で貧困の現状を訴えました。

そして彼女についても

絵が大好きで将来はデザイン系の仕事につくのが夢です。しかし経済的な壁に直面し、進学を諦めざるを得ない状況に追い込まれています。

理由は家庭の収入がある一定基準に満たない貧困状態にあるからです。

子どもの貧困 学生たちみずからが現状訴える - YouTube
とはっきり言っているのだ。


であるならば、問題は彼女が「経済的に厳しい環境で生活する高校生」なのかではなくて「ある一定の水準に満たない貧困状態にある子ども」なのかという点である。何も相対的貧困層ではない「経済的に厳しい環境で生活する高校生」について報道してはいけないというのではない。しかし「家庭の収入がある一定基準に満たない貧困状態」というからには、そうでないのにそうであるかのように報道したら、それは虚偽報道である。


彼女は相対的貧困」なのか否か。知りたいのはその点である。ところがNHKはその点を明らかにしない。片山さつき議員のツイッターでも


とNHKは説明したとなっている。ここでもその点については何も釈明していない。ただし、これは読みようによっては、女子高生本人がそう言ったのをNHKはそのまま放送しただけと解釈することも可能だ。


そもそも、収入がいくらあるかなどどうやって確認すればよいのだろうか?「行政機関」がそんなことを開示するはずがない。とすればNHKが確認できるのは、本人や親に「あなたの家は相対的貧困の定義に当てはまる貧困家庭なのですか?」と聞くことだけだろう。


NHKの回答(と思われるもの)だと、

本人や家族のほか、行政機関などの幅広い取材を行い、経済的に厳しい環境で生活する高校生だと判断しています。

だから、一見すると確認したかのように見える。もしそうならば、本当は相対的貧困ではなかったとしてもNHKの取材には限界があるから非がないということになる(かもしれないが、それでも気付けた可能性はある)。


しかし本当に「相対的貧困の定義に当てはまる貧困」だということを確認したのだろうか?単に「貧困なのは事実ですか?」と確認しただけならば、相対的貧困に限らず、貧困だと思えば貧困なのであって、彼女たちはその意味で答えたにすぎず、双方の「貧困」の認識にズレがあった可能性が十分ある


NHKはその点をごまかしているとしか思えないのだ。