『真書太閤記』の類話(その4)

『真書太閤記』の類話(その3)の続き。


○訴えられる編

『真書太閤記

さても光明寺の僧徒は日吉丸を憎み罵りけれれ口賢ければ何時も僧徒を云い込め、一つもかれ等が下知を受けず。是に依りて和尚へ斯く告げしかば和尚の曰く、然らば我膝元に置て召し使うべしとて、それより方丈に入置て片時も外へ出さず。

『弁慶物語』

その後鍛冶を近付けて、一尺二寸に金ぶち打たせ、八角に角をたてて、角々に刃を付け、藍の菱をばいかいかと彫らせて、黒漆に塗らせ、持ち所は二重革を畳み雁木型に巻かせたるを、右の小脇になし、悪口打擲する間、老若修学の者共、若一殿の手にかかり、傷を付かぬは無かりけり。はじめの程こそ師匠にも大納言にも免じけれ、此事度々に及ぶ間、一山の大衆ことごとく同心に訴訟をこそいたされけれ。


○審議中編

『真書太閤記

寺中に憎まぬ者は無かりける。上人も気の毒に思えども、一旦預かりし者なれば用捨を加え差し置かれけるが、既に十三歳にも成しかど手習い学問は一向勉ず

『弁慶物語』

そもそも当山は、一稚児・二山王の事なれば、ことさら寵愛申すべきに、若一殿御成人に随いて、いよいよ修学の思いに心を染め、これ相応して目出たかるべきに、その議はかつてましまさず、敬い申せば、却って悪口・打擲・刃傷に及ぶ。


○匙を投げられる編

『真書太閤記

上人も駆け付け此体を見て呆れ果て、最早十二歳なれば物のわきまえも有るべきに、斯かる事を致す條言語道断なり。何と叱るべき様もなき悪行なり。最早我等には差し置き難し早々に親元へ帰すべし。

『弁慶物語』

よしよし衆徒の事はともかくもあるべし、既に稚児達、其の他の童共に数多の傷を付け、生まれも付かざるかたわになし給へば、その親類共、訴訟、他に異なり、今より以後、当山に心ざしあるとても、幼き者一人もあぐる事あるべからず。若一殿一人に一山の訴訟を空しくし給うべきか、いささか御計らいあるべしと、同心に申されければ、けい心の給うよう、衆議尤もいわれあり、如何様此稚児を親父の方へ送り候べしとぞ申されける。


以下面倒なので略。
弁慶物語(あらすじ)上巻(京都大学電子図書館)
弁慶物語(あらすじ)下巻


日吉丸は三河を目指して出奔。
弁慶は各地を転々とする。


日吉丸は橋の上で蜂須賀小六に出会う。
弁慶は義経に出会う(「弁慶物語」では橋の上ではないけれど)。