NEWS23で「江戸しぐさ」特集

俺は見てないんだけれど
『NEWS23「江戸しぐさ」特集』を見て感じた事 - 杜の里から
で、ついさっき知った。「江戸しぐさ」なんて今さら検証するまでもないニセ歴史である。いや無かったことは証明できないという論法で実在を主張することは可能だけれども、そんなものを教育の場で使用することが極めて不適切なことなのは言うまでもない。しかし、たとえ実在する証拠に乏しくても「良いこと」なんだからいいではないかという論理で擁護する人がいて、面倒なことになっているのである。こういうことはこの手の事例ではいつものことだ。


でも、そんなことは「NEWS23」で取り上げられようが取り上げられまいが、既にいろんなところで論じられていることであって、「NEWS23」に便乗して今更俺が書くことではない。


俺がここで言いたいのは法政大学の田中優子総長のことである。


「江戸文化に詳しい田中優子法政大学総長」は、「江戸っ子大虐殺はあった?」という問いに「聞いたことない はじめて聞いた」「虐殺する理由がないのでありえないと思う」と答え、「江戸しぐさ」ついて「想像ですよね つまり空想といえばいいのか」と答え、「(歴史でなく)道徳の教科書だからどうでもいいのかとなると非常に大きな問題」とおっしゃっている。


な、なんだってー!


いや何に驚いたかって、別に言ってること自体はまともであって、どこにも驚く要素はない。


そうではなくて、その発言が田中優子法政大学総長の口から出たことに驚いたのである。


だって田中優子氏といえば
法政大・田中優子教授「『江戸しぐさ』は相手を思いやる、独自の日本文化」 - 見えない道場本舗
田中優子氏じゃないですか。

講演終了後の質疑応答では活発な質問がなされ、田中氏は「江戸しぐさ」を基に補足説明をされました。田中氏は、「”江戸しぐさ”といわれる”傘かしげ”や”こぶし腰浮かせ”などは、相手を思いやる気持ちがないとできない動作です。重要な点は、それらが社会へ出る中で、人間関係の距離感を自然につくりだすという、独自の日本文化であることです」と述べられました。

法政大学 社会学部メディア社会学科教授 田中優子 氏が講演| イベント案内/開催報告|イベント|麗澤大学 Reitaku University


何ですかこれは?田中優子氏は「江戸しぐさ」の流布に大きな役割を果たした張本人の一人じゃないですか。田中氏は著名な江戸文化研究者だ。しかも在野の研究者ではなく大学に属する研究者である(念のために言えば経済学者が趣味で江戸文化を研究したというようなものではなくて江戸文化の研究が本職である)。江戸文化研究の学者が「江戸しぐさ」を肯定した。この責任は極めて重大だ。


そんな人が何で「江戸しぐさ」批判の第一人者みたいな顔して、しれっとこんなこと言ってるんですか?番組を見てないんだけれど「過去の発言は間違ってましたごめんなさい」とか言ったわけじゃないでしょう。


なんだこりゃ?


※ 田中氏が「江戸しぐさ」を肯定したというのが事実ではなくて、麗澤大学の記事に誤りがあるという可能性はゼロではない。ただやはりその可能性は低いだろう。


※ なお前にも書いたように「江戸しぐさ」の流行そのものが「進歩的な人達」によって「江戸時代は素晴らしかった史観」が90〜00年代に盛んに唱えられた風潮に乗って脚光を浴びたものであると思われ、その第一人者が田中氏その人であろう(今では「江戸しぐさ」といえば自民・産経・右翼みたいなイメージがあるようだが、元からそうだったわけではないと思われ、朝日新聞東京新聞が好意的に取り扱っていたのである)。