トンデモをもう一つ。
「魏志倭人伝」に以下の記述がある。
女王國東渡海千餘里、復有國、皆倭種。 又有侏儒國在其南、人長三四尺、去女王四千餘里。 又有裸國・黒齒國、復在其東南、船行一年可至。
「侏儒國」の「侏儒」とは
1 背丈が並み外れて低い人。こびと。
2 見識のない人をあざけっていう語。
⇒しゅじゅ【侏儒/朱儒】の意味 - 国語辞書 - goo辞書
という意味であり、ここでは1の意味だと考えられる。「尺」の長さは時代によって異なるので、「三四尺」というのがどのくらいなのか不明だが、漢代は1尺「約23.09cm」なので、70〜92cm程度であろうか。
⇒尺 - Wikipedia
神話・伝説を合理的に解釈するとすれば事実だとは考えられないので大げさに表現しているということになるだろうが、あくまで神話・伝説として解釈すればメルヘンに出てくるような「コビト」であっても問題ない。
「裸国」は文字通り裸族が住んでいるということになるだろう。
「黒歯国」は「歯が黒い」ということだ。
⇒黒歯国 - Wikipedia
お歯黒の風習は日本にもあるが東南アジアにも見られる。
⇒お歯黒 - Wikipedia
従って実在の国かもしれないが架空の国かもしれない。元はモデルがあったけれど伝説化したのかもしれない。
それぞれ現実に有った国として比定しようとする人もいるようだけれど、いずれも架空の国と考えた方が良いだろうと俺は思う。ただし「侏儒國」・「裸国」・「黒歯国」と同じく「女国(女王国)」もまた架空の国であったが現実の倭国に当てはめられたという考えもできるから話は簡単ではない。
それはそれとして、これからする話は邪馬台国とは関係ない。
問題は「侏儒國」と「黒歯国」である。「侏儒國」は「小人の国」であり住民の身長は1mに満たない。これだけならどうということもないが、これと「黒歯国」をミックスして考えた時、とんでもないことを思いついてしまったのである。
「黒歯国」の「黒歯」は「コクシ」と読む。これは音読みである。中国の史料だから当然だ。
だが、これを訓読みすると「くろば」である。
「小人」と「くろば」をミックスしたとき、あの伝説との関係を思いついてしまったのだ。
「くろば、くろば、くろば、くろば、くろば、くろぼ、ころぼ…」
「コロボックル(コロポックル)伝説」だ!
いやいや、コロポックルとは、
アイヌ語で、一般的には「蕗の葉の下の人」という意味であると解される。
コロ=蕗 ポク=下 ウン=いる クル=者、人
コロポックル=蕗の下にいる者
だから、こんなのはコジツケにも程がある、と言いたい気持ちはわかる。でも、それを言うなら日本の「熊野」とか「熊本」いう地名は熊がいたからなのかって話ですよ。元々は「くろば(黒歯)の人」=「クロバクル」だったのが変化したのかもしれないじゃないですか。
いやもちろんそうは言ってもトンデモだという自覚はあるけれど…
なお当然のことながら「くろば」から「こくし(黒歯」」になったという可能性はほとんど無いだろう。中国渡来の「黒歯国」伝説が、日本で「くろば」になり、アイヌに伝わったのではないかということだ。ただ、それなら日本に「くろば」伝説があっても良さそうなもので、ここが弱いけど。
※ ところでコロポックルといえば、Yahoo!ブログに「北の考古学」というブログがあってRSSリーダーに登録していたんだけれど、今見たら無くなってた。どうしちゃったんだろうと思ったら、はてなに移転してた。
⇒北の考古学
小著『コロポックルとはだれか』では、15〜16世紀とみられるアイヌの小人(コロポックル)伝説の成立に、小人が登場する中世日本の義経伝説「御曹子島渡」が関わっていたのではないか、と書いた。「御曹子……」の義経は、源氏再興のため蝦夷が島の大王がもつ兵法書を手に入れようと平泉を発ち、途中、女人国や馬人島、小人島など奇怪な島々を経巡るのだが、この義経伝説はアイヌのユーカラにも謡われていたし、江戸時代に描かれた蝦夷地地図には小人島や女人島も描かれている。
まさに「女人島(女護の島)」は「女国」、「小人島」は「侏儒國」の延長線上にあるわけで。
※ そういえば義経は「九郎判官」だ。「九郎(くろう)」は「黒」に通じるかもしれない。ただしアイヌの義経伝説では「ホンカン」「ハンガン」などと呼ばれていたらしいが「九郎(くろう)」と呼ばれたという話は聞かない。